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大好きなクルマと大好きな音楽と。

2025

大阪の催【上出優之利 写真個展「クルマの達人」】

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雑誌連載「クルマの達人」の写真を撮っていただいている上出優之利さんの写真個展『クルマの達人』、盛況のうちに終了した東京の催に続き、いよいよ上出さんの故郷である大阪に会場を移し、本日(9月2日・火)より開催されています。

北区・中之島の《キヤノンギャラリー大阪》への道順等は、以下の キヤノン公式ウェブサイトをご覧ください。

【キヤノン 公式ウェブサイト】

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また初日の午後4時から1時間、上出さんによるギャラリートークが開催されます。「クルマの達人」という四半世紀を超える長期連載の表現者のひとりとして、どのように撮影の現場に立つのか、千差万別の表情をみせる被写体に向き合うのか、シャッターを切るのか。質疑応答の時間もあるので、皆さんの質問に対するスリリングな回答が聞けることと思います。わたしもマイクを持って袖に控えることになっていますので、会場で皆さんにお目にかかれることを楽しみにしております。


ところで、ギャラリーに展示される上出さんの写真は、すべて売り物であったりもします。実際、先日の東京の催でも購入された方がいらっしゃいます。A2サイズ個展展示現品で10万円を少し切る価格は、写真家の作品としては新進気鋭の作家に対する評価額として適正価格のようです。

作家と作品と評価とお金について、ふと思ったことを書いてみたいと思います。



昔、どうしても音楽関係の仕事がしたくて、そんなもので飯が食えるかみたいな半喧嘩のような父子のやり取りが大学を卒業する頃のわたしにもありました。どこの家庭にでもあるような光景だと思います。

そのとき父は、「コンサート会場に詰めかける何万もの人たちは全員音楽が大好きで、けれども大好きな音楽を提供する側はステージの上にいる数人ぽっちで、つまりその日会場に足を運んでお金を稼いで帰ってこられる人の割合は、一万分の1くらいだ。レコードを売って稼ぐなんてもっと低い割合だと思う。さてあなたは、数万人の先っちょの一人になれる自信があるか? あるいはそういう人たちを蹴落としてでも目立って認められたいというほどある意味がめつくなれるか?」と言いました。

軟弱なわたしはすぐにビビってギターを置いてしまったわけですが、作品づくりのための便利な道具が充実して、インターネットが普及して作品を世界に流通させる仕組みを安価で利用できる、そんな今の時代でも、創作して換金して生活を成り立たせてさらに次の一手のための糧を得るという一連の行為を連続させて生きてゆくことは、煎じ詰めればかつて父がわたしに言ったことと何一つ変わっていないと思います。

わたしより2歳年上の上出さんはもともとミュージシャン志望で、そのこと自体は我々の世代の男子の半数くらいは考えていたような青年の代表的夢想のようなことなのですが、実際に音楽を金にするための方法を模索するために上京して、バンド活動ではらちが明かないと悟ると実際に音楽制作の側に挑戦して、実際にクラブDJとしての活動も始め、実際に中森明菜の楽曲制作のような大きな仕事に携わることも経験して、2011年の東北大震災の非情を目にしたときに写真で遺す人になることを決意して実際にカメラを手にして、実際に撮影のために街に飛び出し、実際に作品集を自費で編纂(へんさん)して出版して、実際にフランスの展示会で作品を披露しキヤノンの公式ギャラリーで個展を開き、今や実際に写真を撮ることを生業とし、昨日も実際に連載「クルマの達人」の取材に同行して撮影を行い、来月も彼の写真は“上出優之利”のクレジットと共に実際に有料媒体に掲載され全国に流布されるわけです。

この“実際に”を実現するためのあれこれ……行動や発想や切り替えや思い切りや思い込みや勢いやあれこれ、おおよそ多くの人には躊躇されるような選択を、そのたびにしてきて“実際に”実現してきて今があるその作品があるという歴史が、欠かすことのできない作品の価値なのではないかと思うわけです。

写真の道へ進むと決めたとき、彼は音楽の道へ後戻りできないように所有する音楽機材をすべて手放し、ひとまず一銭にもならない作品づくりのために自分の時間の大半を注ぎ、まったく白紙だった写真に関わる人脈づくりのために足を棒にして人に頭を下げ、おそらくは生活のために苦虫を噛み潰すような思いも積み重ねつつ、ようやくの15年目に到達する今日を過ごしているということだと、想像します。

そのような経緯を経て目の前に存在する“写真”という作品を買うという行為は、単に欲しいものを手に入れるという消費行動ではないと思うんです。もちろん自宅の玄関に飾りたいとか、お気に入りのひとつとしてコレクションしたいとかいう目的があるかもしれませんが、その行為は上出優之利という生き方へのリスペクトであり、支払った金額の価値があることを買い手が証明しました、という動かぬ証拠を刻みアーティストを創ってゆくという文化的な行為だと思うのです。

もちろんそれは、余暇を使って趣味でサクッと撮った写真に価値がないということではまったくなく、そういう写真のほうが美術として素晴らしいとかそうでないとかいう意味でもありませんが、上出優之利という写真家がその1枚をそこに創造するに至った物語に与えられたのと同じ評価を得ることは難しいだろうと安易に想像できるわけです。

東京・銀座でのギャラリートークには、50人ほどの老若男女取り混ぜた観客が詰めかけ、質疑応答を含めて1時間半に及んだトークショーを立ち見で夢中になっていました。この人を惹きつける人間力が、作品の魅力であり評価であり、お金に置き換えられてゆくのだと思います。要は、写真作品魅力は、写真そのものだけではないだろうということです。



本日、大阪・中之島で開催されるギャラリートークには、どのくらいの人が集まるでしょうか。会期を通じてどのくらいの人が彼の作品を見に来るでしょうか。

「クルマの達人」の仕事を依頼した5年前、“あなたはきっとその人徳と実行力で海外で活躍するような写真家になるので、わたしはいま唾をつけにきた。”と上出さんに話しました。なにもかも自腹で突進してきた写真家としての活動に、日本だけでなく海外でも“評価の標し”としてお金を遺してゆく人が出始めていることをいちファンとして嬉しく思うと同時に、ひとつのコンテンツを共同で制作するパートナーとしていち早く仲間にすることに成功したヤマグチの選定眼の確かさにニヤニヤしたりもしていると、まあそういうわけです。

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NBロードスター スピーカーシステム 3Dフルシステム第1号

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NBロードスターのヤマグチ スピーカーシステム、3Dフルシステムを搭載してくださった方から、とてもうれしいメールをいただきました。

オーナー氏の承諾がいただけたので、メールの一部を紹介いたします。


『帰り道、音楽を聴きながら走りましたが、速度やトンネル等の外乱要素に影響されること無く、音楽がはっきり明瞭に聴こえることに凄く感動しました。

今までついつい無意識に音量調整をしていたのですが、そういったこと無く音楽と、そして運転双方に集中できることでクルマの楽しさ、ワクワクを再発見させていただきました。

免許を取って初めて運転したとき、自身の愛車で初めてMDを再生したとき、その想いが蘇りました。長年運転していると忘れてしまう初心を思い出せたのは、本当に得難い経験です。

素敵な音に出会えて、楽しいドライブができそうです。
昔聴いていた曲をまた聴き直したいと思います。』

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NBロードスター用のyamaguchiスピーカーシステムは、2022年にスピーカーシステム本体が完成しましたが、サブウーファーの開発が暗礁に乗り上げてしまい、フルシステムで楽しみたいとお考えの皆さんの期待に応えることができないままでいました。

NAロードスターのようにパワーアンプ内蔵のサブウーファーを取り付けるスペースがなく、わずかな空間を活かそうとするも、NBオーナーはロールケージを取り付けている割合が多いので対応すべきだという情報があり、そこで万事休す、打つ手見つからず止まったままになってしまったわけです。

で結局、2025オアシスロードスターミーティングへの出展に間に合わせるスケジュールで、ロールケージを装着していない車両のみに取り付けられる仕様として試作を再開。3作目の試作機を搭載したNBロードスターを展示しました。今回セットアップしたのは、その製品版の第1号となります。システム構成は以下の通りです。

★ NBロードスタースピーカーシステム(メインスピーカー、ツィーター)
★ NBロードスターサブウーファー(左右各1=1セット)
★ NBロードスター 3Dシステム
★ BassPLUS+
☆ audison AF M8.14 DSPパワーアンプ
☆ audison AF M4D パワーアンプ
☆ audison DRC MP-CAN コントローラー
☆ audison B-CON ハイレゾBluetooth



うれしいメールをくださったNBロードスターのオーナー氏も、NBスピーカーシステム完成後まもなくから、サブウーファーを加えたフルシステムの完成を待ち続けてくださいました。ゼロからのもの作り、しかも前例のない発想をカタチにしようとするときには、何が潜んでいるかわからない海路を進まざるを得ないわけで、かなりの頻度で暗礁乗り上げ事案が発生しています。あの頃系メルセデス、マツダ・ロードスター、空冷ポルシェ911のどのモデルも、船底を擦らずに完成まで事が進んだことなど一度もありません。それでも、ほとんどの場合は比較的短期間の間になんとか解決策を見つけられるのですが、完全に暗礁に乗り上げて打つ手が見つからなくなるケースも稀に発生します。NBロードスター用のサブウーファーは、完全にその事案でしたが、お待たせした皆さんにはほんとうにご迷惑をお掛けしたと思っています。

ただし、NBロードスターサブウーファーは、現時点ではリアサスペンションダンパーの付近にマウントベースを取り付けているロールケージを装着している車両への取り付けはできません。壺の中に突っ込んだ手を抜くためには、掴んでいた望みを一つ手放すしかなかったということです。


ブログ内でのメールの引用を快諾くださった返事にも、ひと言添えられていました。

『どうしても長年ドライブを続けていくと、初めて走る道、というのが減ってしまうのが悩みの種だったのですが、新しい音を携えて慣れた道を走りなおすとどう映るのか、それが楽しみです。
次の休みが待ち遠しいです。』


ロードスターに音楽はいらない、キミはロードスターのことを何も分かっていない、無駄だ。2017年に大勢のロードスターマニアにそう突き放されて、でも自分のつたない経験を総動員してイメージした“ロードスターで楽しむ音楽空間”をイチミリも諦めずに妥協せずに、もちろんクルマを加工改造せずに取り付けられるように。この世に影も形も気配も前例もないところに理想形を登場させることに伴う辛さも、このようなメールで救われるっていうものです。

ありがとうございます。
オジサン泣きそうです。





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ALPINA とは、なんだったのか。

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昨日届いたカーセンサーエッジ誌が玄関の下駄箱の上に置いてあった。袋を破ってパラパラとめくると、どうやらアルピナの特集らしい。今年、新しいブランドに加えるアルピナを、BMWがどのように仕立ててゆくのか。ミニ、ロールス・ロイスと、独英混合というとんでもなく難しそうなブレンドを見事に調合して新しい価値を創り出したBMWの次の一手、自動車業界以外からも大いに注目されていることと思う。

その一方で、嗚呼アルピナが幕を下ろすのかというさみしさもある。

E-21/3シリーズをベースに仕立てられた「C1-2.3」の写真が1枚でも掲載されていると、それだけの理由で自動車雑誌を買うような高校生だった。ルックスはもちろん、闇雲にパワーを求めないエンジンチューンへのこだわりや、たくさん売ることに燃えていないブランドの雰囲気が格好よかった。1つひとつの部品の選定にこだわり、誰が見てもBMWだけど一部の事情通には明らかにBMWではないアルピナであると認識させるくらいの加減が、ほんとうに格好よかった。



アルピナの特集をパラパラとめくりながら、2013年に出席したパガーニという自動車メーカーの発表会のことを思い出した。日本市場へ初めて参入する記念すべきモデルの発表会ということで、創立者のオラチオ・パガーニ氏の姿も会場にあった。わたしは彼のところに進み、こんな質問をした。

「730馬力で最高速が360km/h。この恐るべき高性能を楽しむ環境が日本にはありません。それでもこのような超高性能車を創って、日本で披露したいと思ったのはなぜですか?」

彼は傍らのパガーニに視線を落とし、そしてすぐにわたしの目を見てこう答えた。

“ It’s my dream.”

嗚呼、これぞもの作りの究極の姿、真髄だと感じた。誰かを満足させる価値ではなく、自己の表現手段としてものを創り、その想いの熱さに共鳴してくれる誰かとそれを分かち合う。誰かの夢を叶えるのではなく、それは“私の夢なんです”とひと言目に発したその言葉に痺れた。何万馬力でも何十億円でも、気が済むまで追いかけてほしいとずきゅんと感じた。

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アルピナといえば、創立者のブルカルト・ボーフェンジーペン氏について知らないわけにはいかない。彼もまた、自身の夢をカタチにするという表現行為が結んだ果実として、アルピナというクルマを世に送り出し続けた。

2005年にドイツのアルピナ社を訪ねて書いた原稿を紹介する。届いたばかりのカーセンサーエッジ誌に連載「クルマの達人」の掲載を確認するより先に、前述のようなことを思い出して懐かしんだ理由を皆さんと共有することができれば、とてもうれしい。

写真はすべて、取材を共にした橋本玲さんによる。

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アルピナとは、なんだったのか
アルピナを所有する歓びの理由とは

心に人生を謳歌する歌を持とう。目的を達成するだけでなく、そこへ迫りゆくドラマを楽しもう。そして、アルピナのステアリングを握ろう。アルピナの魂である“エレガンス”の意味は、そのときそこはかとなくあなたの全身を打ち振るわせるはずだ。アルピナとはそういうクルマ。それがアルピナの心。

小さなショールームを構えるアルピナの本社で我々を迎えてくれたのは、グンター・シュスター氏。セールスディレクターの肩書きを持つ彼は、アルピナの人になってから25年目を迎える。

「ご存じのように、アルピナはBMWの各モデルをベースに、独自の価値観を持ったクルマを送り出しているメーカーです。創立者のボーヘン・ジーペンが、63年にツインキャブを備えた1500を製作したことに始まり、翌64年にアルピナとして正式に発足しました。以来、常にボーヘン・ジーペンの考える理想の1台を生み続けているわけです」

今年で創立40周年を迎えるアルピナは、当初BMWの性能を向上させるためのパーツを開発、販売することを主な業務としていた。技術的なノウハウを磨くためのレース活動も盛んに行い、71年にはヨーロッパでツーリングカーと名の付く全てのレースでの勝利という快挙を収めるに至った。シルバーボディに若草色のアルピナストライプをまとったBMWが、サーキットを疾走する姿を記憶している人も多いのではないだろうか。彼らの技術的ノウハウやレース活動はBMWからも高く評価され、次第にBMWの一部門に等しい関係を築き上げていったのである。そのような過程を経て、83年には自動車メーカーの認可を獲得する。当時としては、小規模なコンストラクターがそのような立場を確立するというのは、異例中の異例であったことを考えると、この頃までに技術面だけでなく、メーカーとして必要な素養をすべて備えていたといえるのだろう。

「BMWアルピナ、としてメーカーの地位を得るまでの過程で、アルピナはどういうクルマを生み出す存在であるべきかということを盛んに模索していました。チューニングの手が加えられた高性能車というだけでは飽きたらず、もっと独自の価値観を主張する1台を生み出す存在でありたいという夢を追い求めたのです。そして我々が見出した答えこそ、あらゆる意味においてエレガンスを表現する企業であることでした。アルピナのフィロソフィは、そのようにして誕生したのです」

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ショールームの裏手へ進むと、そこにはまるで技術研究のような作業にいそしむエンジニアやメカニックが働くエリアが広がっている。清潔な床の工房では、1基1基のエンジンが完全に分解され、計測、加工といった手が加えられていた。アルピナとしてのシリアルナンバーが打刻されたエンジンブロックにマイクロメーターを当てる若いスタッフの横で、重鎮とおぼしき白髪の男が、トルクレンチでナットを締め込んでいる。そのフロアには十名ほどのスタッフがいたが、この人数で一体一日に何基のエンジンが組み上がるというのだろう。作業は丁寧で時間はとてもゆっくり流れている。

「腕のいいコックというのは、自分だけがおいしいと感じる味覚を持っているだけでなく、その味を望む人に提供できるだけの腕を備えていなくてはなりません。けれども10万人、100万人という人に理解してもらうために、その味を薄めてしまうことがあってはならないのです。我々は決して数を求めません。その代わり、我々でなければ生み出せない料理を確実にサーブし続けます。

いいですか、現代では工作技術が大幅に進化したお陰で、とても高い品質のものが大量生産できるようになっています。けれどもそれらは、あくまでも多くの人を満足させる最大公約数を考慮した既製品でしかないのです。テーラーメイドのスーツにしかないフィット感を望む人というのは、そのような既製品とは全く違う価値観を自ら選ぶ製品に求めているわけです。アルピナはそういう人のために、クルマを作っているのです。数ではなく満足なのです」

シュスター氏の言葉の意味を確かめるような光景は、エンジン工房だけでなく、インテリア、エクステリア、車両のアッセンブル、最終チェック、あるいは開発中のエンジンが回るテストベンチといったすべてのフロアで見ることができた。アルピナは間違いなく100%、人の手でクルマを作っている。

「先ほど料理の話をしました。心を打つ料理というのは、特別なものでなくてはなりませんが、逸脱した個性が露呈してしまっては台無しです。とても絶妙なセンスで完成されなくてはならないのです。

アルピナにおいて、そのさじ加減を決定するメジャーは、他でもないボーヘン・ジーペン本人なんです。彼は今でもプロトタイプが完成すると、彼の息子とともにそのクルマに乗り、テストドライブを行います。そして彼の言葉は、まるで本人がクルマと同化して部品のひとつになってしまったかのような表現で発せられるんです。

“今の動きはこういうことだよ。もっとこういう風になるといいね。ここは素晴らしく仕上がったね”

分かりますか。アルピナはボーヘン・ジーペンの感覚、生き様そのものなんです。ですからそれを、世界中の最大公約数に解釈し直して分かってもらおうという必要はないんです。それよりも、このようなプロセスを経ることで、クルマの性格はどんどんピュアなものとして澄んできます。それがアルピナというクルマなんです」

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実際アルピナに乗ると、なにひとつ尖った感触がないのに、得も言われぬ興奮に満ちているクルマだという感激に包まれる。十分にパワフルなエンジンは、けれども決して神経を逆なでするような表情を見せない。シートに身体が吸い付けられるようなコーナリングフォースを実現するサスペンションは、けれども決して乗員を激しく揺すぶったりしない。上質な革の香りと透き通ったエンジンサウンドに包まれながら、ひたすら感激だけを味わいながら道程を進めることに酔っている自分の姿を見つけることができるのだ。エンジニアリング的に言うならば、すべてがまったく機械として追求すべき正しい方法で、しかもすべてを紙一重の抑制の範囲の中に留めた仕業。とんでもなく次元の高い技術力と、信じられないほど理性的な思想が両立していなければ、こういうクルマ作りは不可能だと言い切れる。

「アルピナは、何かほかのものと比べて良い悪いを語るべきクルマではありません。もちろんそれは、BMWよりもいいものだ、という感覚でもないのです。ただひたすらに、誰にも似ていない違うものを作っていきたいと考えているわけです。

我々の言う“エレガンス”という言葉の意味は、大きな屋敷に住んでいて、あり余るほどのお金があってということを指すのではないということを是非知っておいてください。エレガンスは物質的なものではなく、個々の心の中に宿る感覚だと思うのです。ですから、人生に夢があって、そこへ邁進しようという気持ちに溢れている人は、とてもエレガンスな人なのです。そういう気持ちを表現する手段として、素晴らしいドライビングを楽しみたいという思いがあるのなら、アルピナはすぐ隣りにいるといってもいいほど身近に感じられるはずです。アルピナに宿る魂は、そのような人生を送る人にこそ愛おしく感じられるものに違いない。そう思うんですよ」

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上出優之利 写真個展「クルマの達人」、トークショー

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上出さんの写真展で開催されたトークショー、大盛況でした。キヤノンギャラリー銀座へひとときに50人以上が詰めかけたと言えば、ギャラリーを訪ねたことがある人なら分かると思います。すし詰め寸前の立ちっぱなしの1時間20分。お越しの皆さま、たいへんお疲れ様でした。上出さんの人徳、さすがですね。素晴らしいです。

上出さんが雑誌連載「クルマの達人」のために撮影した作品を紹介する写真展ではありますが、わたしもマイクを持って皆さんの前に立つことになりました。上出さんと共に展示された写真を順に巡り、わたしは写真で表現されたそれぞれの「クルマの達人」にまつわる仕事や個性が垣間見えるエピソードを話させていただきました。

記録に、と思い、それぞれの写真の前で上出さんとわたしが話す様子の動画を撮りました。その中から、お一人の動画を紹介します。このブログには動画を直接貼り付けることができないので、貼り付けた先のリンクを載せておきます。ぜひ、ご覧ください。

【トークショーの一場面】

ときに「クルマの達人」、振り返ればカーセンサー、カーセンサーEDGE誌での連載期間が26年目に入っています。そもそも「クルマの達人」という連載タイトルは、それ以前にCarEx誌で連載をしていた“新日本達人紀行”用に書いた数年分の原稿をまとめて出版したいという話をいただいた時に、その書籍用に考えた標題です。「クルマの達人」という看板は1997年に書籍のタイトルとして世に出ましたが、クルマにまつわる何かに心注いで働く人の考えや生き様に焦点を当てて紹介するというコンセプトは、もう30年を超えて継続をさせていただいているということになります。

そのような時間の中で、パワフルで魅力的な才人の生み出す企画に採りあげていただけたことに、とても感謝しております。


【上出優之利 写真個展「クルマの達人」】
東京・銀座での開催は26日(土)までです。ぜひ、お運びください。

キヤノンギャラリー銀座
入場は無料ですが、休館日があるので以下のウェブサイトで詳細をご確認の上、お出かけください。

【キヤノン公式ホームページ 上出優之利写真展「クルマの達人」】




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都地龍哉さん・上出優之利 写真個展「クルマの達人」

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【上出優之利 写真個展「クルマの達人」】
東京・銀座で絶賛開催中ですが、《明日(7月19日・土)の午後3時から》、写真家の上出優之利さんが皆さんの前で、展示中の作品を一点ずつ振り返りながら、氏にとっての撮ることについて説いてくれる約1時間のトークショーを開催します。

この席に「クルマの達人」で紹介したクルマの達人も駆けつけてくださり、上出さんといっしょにご自身の仕事についてお話をしてくださいます。詳細はブログの後半にありますので、ぜひ皆さんもいらしてください。

わたしの方でご来場予定を把握している方々、どのような「クルマの達人」なのか、ご来場いただける皆さんにお知らせしておきたく、誌面に掲載した原稿をここで紹介します。


四人目は…… 

都地龍哉さん
とぢ商店

一等賞以外はみんなビリ。
自動車の登録はそういう仕事。



到着した頃には、冬の空はすっかり暗くなっていた。シャッターの下りた工場の灯りが漏れる窓のあるドアを開けて中へ入ると、エンジンルームに上半身を突っ込んだ都地さんがいた。わたしの顔をチラリと見て、もう終わりですから上で話しましょう、と工具をまとめ始めたのを止めて、今の様子を写真に撮りたいのでどうかそのままでとお願いした。明るい時間帯には車検場に出掛けているか、机で調べ物をしていることが多い都地さん。真っ黒に手を汚してクルマにかじりついている光景は、もう長い付き合いになるわたしにとっても珍しかった。

一等賞以外はみんなビリ、というのは、都地さんの口癖である。都地さんは若い頃、バイクのレースにハマっていた。クルマにしてもオートバイにしても、結果に対する残酷なまでの非情さは、コースの上で真っ赤になってアドレナリンを噴出させた経験のある誰もが嫌というほど思い知らされる現実である。

「自分のことを他人が評価する。正確には他人ではなくて、状況なのかな。つまり、現実はこうですよ、ということがはっきりしちゃうのがレースなんですよね。そこには、頑張ったねとか、素晴らしい個性ですねとか、そういう表現はなにもないんです。決められたルールの中で競り合って、誰がいちばん速いか決めましょう、という場の一人に加わった瞬間、ルールに従って結果が出るだけ。2等賞の表彰台に立てても、横には1等賞の人がいる。3等賞を見てやった! と思うより、1等賞を見て負けたと感じる性分なんです。だから1等賞以外はみんなビリ、自分にとってはね」

そんな都地さんの仕事は、ざっくり言うと車検屋さんである。ただし、都地さんを頼って日本中から持ち込まれるクルマの多くは、いわゆる町中を普通に走っているクルマたちではない。レース専用車として製作されたクルマ、分厚い装甲を纏った特殊用途専用車、遙か昔にメーカーが消滅してしまった見たことも聞いたこともないようなクラシックカー……。そういうクルマにナンバープレートを付けて、つまり日本の法規に適合した登録車両として公道を走れるようにしてほしいという望みを叶える車検屋さんなのである。

「難しい仕事なんですが、少し見方を変えると難しくはないとも言えます。つまり、登録を適えるためのルールは法律ですから、明文化されたものとして決まっているわけで、自分がやることは、そのルールの中に収まるクルマですよということの証明作業なんです。もちろんその作業の過程には、灯火類や制動装置の仕様や性能、排気の状態を見直すような作業がつきものになりますが、何をしていいのか分からないということはひとつもないわけです。すべてルールで決まっていることですから、それを目標に仕上げればいいわけで。そういう意味では、レースのようにライバルが毎戦ごとにどんどん速くなって、いつまで経っても追いつけないなんていう難しさはありません」

けれども、任された車両によっては、そのルールが示すしきい値までの距離が遙か彼方に感じられることもあるはずだ。例えば、F1マシンで青山通りを走りたいというような夢。

「不可能じゃないですよ。製造者がはっきりしている分だけ楽かもしれません」

はははと笑った後、ポツリと。

「だから、1等賞以外はみんなビリなんです。あとちょっとでナンバー付けられたのにね、という評価は、自分の仕事にはないんです」


その日は、かなり遅くまで話し込んだ。辛くなることはないか、というような訊ね方をしたと思う。やることは同じだと笑うその仕事は、前例のない、つまり誰かに尋ねて答えを見つけられる可能性がとても低く、そういう事ごとにひとり黙々と取り組む日々に孤独を感じることはないかということが訊きたかった。

「レースと同じだと思っています。結果がすべてと話しましたが、それは言い換えれば誰かの評価を勝ち取るということと同意だと思うんです。この仕事を評価してくれる人がいるとしたら、もちろん自分を信じて依頼してくれたお客さんですよね。国もそうです。法律に適合していることが認められて初めて車検証は発行されます。そして、そうですね……」

そして?

「家族です。妻や娘たちが、お父さん凄いねって言ってくれること。評価という言葉が相応しいかどうかはわかりませんが、毎日、何十年もこの工場で世界中からやって来た見たこともないようなクルマやバイクを前に奮闘している姿を、いちばん間近に見ているわけですからね。自分にとって家族以上の評価者はいないんじゃないかって、そう思います。明日も、明後日も、困ったなぁどうしよう……というクルマが待ってる工場へ戻って、何とかしよう何とかなるさと仕事に打ち込める最大のモチベーションは、実はすごく身近にあるもんだと思います。自分の気持ちもそうだということも含めてね」

帰り間際、工場前にあった巨大な装甲車に乗って、都地さんと一緒に記念写真を撮った。ニカッといつもの笑顔で写真に収まってくれた都地さんがひと言。

“この装甲車は、すぐにナンバー付きますよ”

嘘みたいなことをサラッと言った都地さんのことがなんだかおかしくて、写真の中のわたしも思いっきりの笑顔で隣に収まっていた。


※2021年1月取材

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【上出優之利 写真個展「クルマの達人」】
  • ★7月15日(火)~26日(土) キヤノンギャラリー銀座
入場は無料ですが、休館日があるので以下のウェブサイトで詳細をご確認の上、お出かけください。
19日(土)15時からのトークショーでは、わたしもマイクを持たせていただきます。

【キヤノン公式ホームページ 上出優之利写真展「クルマの達人」】




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崎山和雄さん・上出優之利 写真個展「クルマの達人」

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【上出優之利 写真個展「クルマの達人」】
東京・銀座で絶賛開催中ですが、《明日(7月19日・土)の午後3時から》、写真家の上出優之利さんが皆さんの前で、展示中の作品を一点ずつ振り返りながら、氏にとっての撮ることについて説いてくれる約1時間のトークショーを開催します。

この席に「クルマの達人」で紹介したクルマの達人も駆けつけてくださり、上出さんといっしょにご自身の仕事についてお話をしてくださいます。詳細はブログの後半にありますので、ぜひ皆さんもいらしてください。

わたしの方でご来場予定を把握している方々、どのような「クルマの達人」なのか、ご来場いただける皆さんにお知らせしておきたく、誌面に掲載した原稿をここで紹介します。


三人目は…… 

崎山和雄さん
崎山自動車サーヴィス

俺は永遠の自動車少年。
これまでも、これからも。

人間五十年 下天の内をくらぶれば、夢幻のごとくなり。』

路地を挟んだ向かいには、小さな八百屋さん、錠前屋さん、ガラス屋さんなんかが商売をしている。籠の上に載っかった真っ赤なトマトを指さしながら、腰の曲がったおばあちゃんと夕飯の材料を求めにきたお客とのやりとりが微笑ましい。隣の錠前屋では軽トラから小さな段ボール箱を忙しく店の中へ、ガラス屋の老主人は店の奥の作業台でサッシに刃物を当ててなにやら作業中だ。
ちょっと騒々しい変わったクルマがやってくると、近所の窓から半ばいぶかしげにも見える興味深そうな顔が覗く。崎山自動車サーヴィスは、古くからの人が住む東京の街角の小さな自動車修理工場だ。

20年前、初めて崎山さんさんのことを紹介した「クルマの達人」を、わたしはこのように書き始めた。崎山自動車サーヴィスは、名うてのメカニックが工具を振るう整備工場として当時つとに名高く、愛車の仕上がり具合を覗きに立ち寄る有名人の姿も頻繁にあった。けれども、そのようなことを鼻に掛ける気取りはまるでなく、いわゆる町の整備工場そのものだった。

クルマの腹下から寝板を滑らせて現れた崎山さんに散歩する近所の人が「いい天気ね」と声を掛けるのと同じ調子で、整備が終わったアストンマーチンを引き取りに来たテレビでよく顔を見かけるような人に「クラッチをもっとうまく
やらなきゃ、また壊れちゃいますからね。ミートはこういう感じで……」と手振りを添えてニコニコと話す。その名調子をうなずきながら聞くクルマの持ち主の表情の、なんと楽しそうなことか。

いつも話してくれる「町の修理屋の代表みたいになりたかったの。それを東京でやりたかったわけ」という台詞ままの崎山自動車サーヴィス、今年いっぱいで幕を下ろす。ちょうど60年間東京で、すなわち戦後輸入車の移ろいのすべてを整備の現場で見続け、支えてきた「クルマの達人」が間もなく仕事の為の工具を置く。

「品川の大井町っていうところで生まれたんだけど、伊達のお屋敷が進駐軍に接収されてたせいで外車だらけの町だった。格好いいなって憧れたよ。で、中学の時は自動車雑誌を古本屋で手に入れて隅から隅まで読むようになって。16歳から赤坂にあったジャックス・ガラージっていう整備工場で働き始めて、気がついたら77歳になってた。

大人ってのはさ、よく見てると思う。職業訓練校に入れって勧めた叔父さんは、おまえはクルマが好きでそれ以外はできないっていう理由で話をしてくれたし、訓練校の先生に呼び出されたかと思ったら、おまえは将来好きなこと以外やるな、そういうタイプの人間だって諭された。

それに輪を掛けるような言葉でいろいろ教えてくれたのは親父(ジャック・Y・タナカ=ジャックス・ガラージの社長メカニック。崎山さんと血縁関係はない)だと思う。まだ働き始めたばかりの俺にプラグ交換をしろって。いや、そんなのできませんよって答えたら、好きなんだからできないわけない。やってみろ、って。1ドル1200円くらいで輸入部品の値段を計算していた時代だからね、プラグでも給料を軽く超える高級品で、しかも簡単に折れちゃうほどやわい。無茶なことを言う人だって感じたけど、俺のことを本当によく見抜いてくれたんだなって思う。21歳の時、おまえは将来自分で工場をやるに違いないので、自分が整備できるようになるだけじゃなく、人の使い方を覚えろ、とかね。

若かった頃に親父が掛けてくれたそういう言葉は自分の力になっている。何かあったときに慰めてくれる人より、力になる言葉を掛けてくれる人が好きなの。俺が24歳の時に若くして亡くなっちゃったけどね」

一間間口の商店が並んでいた場所にはマンションが建ち、通りを行き来した昔からの顔もすっかり減った。今や崎山自動車だけがこの界隈に流れる昔ながらの空気を残している場所になってしまった。

「体力のこともあるけど、もういいかなって。一つのことに60年だからね。もう十分でしょ。

若い頃に“東京には整備工場が掃いて捨てるほどある。でもおまえに金を払いたいから来てるんだ。なんたって、おまえみたいなのは放っておけない。”って、お客さんによく言われたよ。男芸者だからさ、俺がやるメカニックって仕事は。工場はステージで、そこで舞うわけだよ。こりゃあ凄いって、喜んでもらってなんぼだから。あっという間だったね、60年。

夢幻のごとく……。織田信長が好きだった『敦盛』の一節、いいでしょ。あまりに一瞬のことで、自動車少年のままだから。永遠の自動車少年のままだから」

※2020年10月取材

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【上出優之利 写真個展「クルマの達人」】
  • ★7月15日(火)~26日(土) キヤノンギャラリー銀座
入場は無料ですが、休館日があるので以下のウェブサイトで詳細をご確認の上、お出かけください。
19日(土)15時からのトークショーでは、わたしもマイクを持たせていただきます。

【キヤノン公式ホームページ 上出優之利写真展「クルマの達人」】




※ぜひ、Facebookでわたしをフォローしてください。ブログよりも更新が楽なので、スピーカーシステムの話、クルマの話、はるかにたくさんの発信をしています。簡単な動画ですが、スピーカーシステムの音を車内で録音したファイルも、Facebook内にはたくさんあります。鑑賞だけならアカウントは不要です。下のFacebookのURLから飛べます。

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三村英之さん・上出優之利 写真個展「クルマの達人」

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【上出優之利 写真個展「クルマの達人」】
東京・銀座で絶賛開催中ですが、《明日(7月19日・土)の午後3時から》、写真家の上出優之利さんが皆さんの前で、展示中の作品を一点ずつ振り返りながら、氏にとっての撮ることについて説いてくれる約1時間のトークショーを開催します。

この席に「クルマの達人」で紹介したクルマの達人も駆けつけてくださり、上出さんといっしょにご自身の仕事についてお話をしてくださいます。詳細はブログの後半にありますので、ぜひ皆さんもいらしてください。

わたしの方でご来場予定を把握している方々、どのような「クルマの達人」なのか、ご来場いただける皆さんにお知らせしておきたく、誌面に掲載した原稿をここで紹介します。


ふたり目は……

三村英之さん
GRAND ARTS

一本の筆と日本人としての感性が
世界を舞台に描き始める日を夢見て


昨年の11月、SEMA SHOWの会場を歩いてきた。

SEMA SHOWというのは、自動車の主にアフターマーケットに関するあらゆるビジネスを対象とした事業者向けの見本市で、アメリカはラスベガスの広大な会場で毎年開催されている。

世界のトレンドを占うカスタムカーに群がる人々の熱気はもちろんとんでもなく熱いのだけど、日本で開催される同じようなイベントではあまり感じられないある雰囲気が、やはり今回も熱かった。

その熱い雰囲気を全身に浴びてるうちに、そうだ、日本に帰ったら三村さんに会いに行こうと、思った。

1ヶ月後、奥の方から工具が動く音が聞こえてくる工房の入り口に立っていた。中に入ってゆくことはせずに外で待っていたら、しばらくして三村さんが表へ出てきた。たった2年しか経っていないのに、前に会ったときよりずっと創作家の風情が強くなったように感じた。なぜだろう。

「自分のやるべきことが、とても整理されてきたような気がします。自分にしかできないことがあって、でもそれを前面に押し出すだけでは理解してもらえないということもわかっていて、じゃあどうすればいいのかという答えが、すごく見えてきたような気がするんです」

少し興奮気味にそう切り出した言葉の続き、実は創ってゆきたい作品の内容については、2年前に話してくれた夢やアイデアと何も変わっていなかった。けれども、やらないことについては、思いっきり明確になっていた。

「仕事ですから、それでお金を稼いで生きてゆかなければならないじゃないですか。そうすると、どうしても得意なんだからやってよと頼まれた仕事を断れない自分がいたんです。もちろん今でも、完全に切り分けられたわけではないです。そこまで、自分が理想だと考えるバランスには到達できていないです。けれども、もっともっと自分らしさが濃い自分になるために、いろいろと整理がついてきたようには感じるんです」

黒く塗られた壁とファンスに囲まれた秘密基地のような空間には、あらゆる技法で描かれた絵や立体物の作品が並んでいる。例えばスプレーガンで描かれた画も、素晴らしい出来栄えでそこに並んでいる。

「あぁ、エアブラシアートの画ですね。もちろん、仕事としてのクオリティは十分以上にクリアしていると思います。でもあれって、エアブラシアートを勉強した人なら誰でも描けるんですよ、技法的には。だから、用意された写真を元にそれをブラシアートで描く、という作業は、自分じゃなくてもできるわけです。そういうものを自分の作品の中から排除してゆこうという流れが、かなり進んだ気がします」

近しい間柄の中で、そのうち活躍の舞台を海外に移してしまうだろうな、と直感する人が2人いる。三村さんは、そのうちの一人だ。

SEMA SHOWで今年も感じた雰囲気の中に、三村さんを置いてみたいと話した。ある作品に感銘を受けたとき、こういう創造ができる人物は誰だろう、そういう人物が籍を置いて力を発揮してもらえるこの企業はラッキーだ、という風に発想する雰囲気がSEMA SHOWの会場には満ちている。だから、組織よりも、個人へのリスペクトが当然のように先に立つアメリカのあの会場で、思い存分 "我こそは!”と叫びながら、作品を紹介する三村さんが見てみたいのだと話してみた。

「前にも話したと思うんですけど、僕の仕事はあくまで代行屋です。それは、夢を叶えるということをピンストライプや立体の造形で実現することはできるんですが、そもそもそれがどういう夢なのかは、お客さんの心のなかにあるものだからです。言葉にしにくいその夢を聞き出して、そのイメージに自分なりの工夫を加えて、そして出来上がりを見た瞬間に満面の笑顔がこぼれるるために必要なことすべてが、僕の仕事だというスタンスは変わっていません。

日本でも、僕のそういうスタイルを理解してくれて、楽しんでくれたり応援してくれたりする人には、とても恵まれていると感じています。でも、もしそういう感激の輪が海を超えることができれば最高ですね! 実は、以前からすごく興味があるんです、SEMA SHOW。来年、ぜひ一緒に行きましょう」

そうですね、三村さん。来年は、とりあえず様子を見に行きましょう。そして再来年はウォッチャーではなく、パフォーマーとしてラスベガスの会場に立ってください。

じゃあ、行きますか! と言ったら、まず英語を勉強しなくちゃですね、と笑っていた。大丈夫、自らの魂の表現を両手で掲げたときのその熱い眼差しがあれば、きっと世界中どこでも日本語で通用します。

※2021年12月取材

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【上出優之利 写真個展「クルマの達人」】
  • ★7月15日(火)~26日(土) キヤノンギャラリー銀座
入場は無料ですが、休館日があるので以下のウェブサイトで詳細をご確認の上、お出かけください。
19日(土)15時からのトークショーでは、わたしもマイクを持たせていただきます。

【キヤノン公式ホームページ 上出優之利写真展「クルマの達人」】




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後藤新太郎さん・上出優之利 写真個展「クルマの達人」

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【上出優之利 写真個展「クルマの達人」】
東京・銀座で絶賛開催中ですが、《明日(7月19日・土)の午後3時から》、写真家の上出優之利さんが皆さんの前で、展示中の作品を一点ずつ振り返りながら、氏にとっての撮ることについて説いてくれる約1時間のトークショーを開催します。

この席に「クルマの達人」で紹介したクルマの達人も駆けつけてくださり、上出さんといっしょにご自身の仕事についてお話をしてくださいます。詳細はブログの後半にありますので、ぜひ皆さんもいらしてください。

わたしの方でご来場予定を把握している方々、どのような「クルマの達人」なのか、ご来場いただける皆さんにお知らせしておきたく、誌面に掲載した原稿をここで紹介します。


まずは…… 

後藤新太郎さん
GARAGE GOTO

本当に生きているんじゃないかと
アルファロメオとは、そういうクルマ


ちょうどピストンを加工しているところだった。手製の治具に旧いアルファロメオのピストンを慎重に取り付け、工作機械の刃物を下ろす位置を何度も確かめてから機械のスイッチを押すと、デジタルの表示パネルに赤いゼロが並んだ。そこまで10分ほど。その後、ようやく回した刃物がキリキリという音を立てながらピストンのてっぺんを少しずつ削り始めた。削り落としの深度を示す赤い数字と、刃先とピストンが触れている一点を交互に見比べながらまた10分ほど。機械を止めてピストンを取り出す。手のひらに乗せて光にかざし納得した表情を見せると、それを大切にトレイの上に戻し、次のピストンを手に機械のところへ戻る。

真剣なまなざしと柔和さが混ざった、得も言われぬ終始の表情を見たとき、嗚呼後藤さんの工場を訪ねているのだなあと、こちらまで気持ちが和んだ。

アルファロメオの整備でつとに有名な後藤さんは、町乗りからサーキット走行まで、愛好家の望む施しを彼らの愛車に注ぎ込むメカニックであることはもちろん、工作機械の前に立ち、彼一流の手仕事を施すチューナーでもある。そして、本当に好きなんだなぁと感じるこの表情こそが、多くのファンの心を掴む魅力の真骨頂なのだと確信させる。

「最初は、どうしてもアルファロメオでなければならないというわけではなかったんですよ。クルマに興味を持ち始めた頃は、解体寸前の国産車を安く買ってきて、自分で直して乗ってました。何台もね。きっと直すのが好きだったんだと思います。機械いじりという意味でね。そんな中で、たまたまアルファロメオを所有することになったんです。まだサラリーマンとして働いていた三十代の頃の話です」

初めて手に入れたアルファロメオも例に漏れず、そのまま安心して乗り出せるような状態ではなかった。後藤さんは、それまでの愛車にしたように修理をして整備をして、いくつかのポイントを自分好みに改良して運転を楽しんだ。そのとき、ある感触が後藤さんの感性を射貫いた。

「特に速いクルマではありませんでした。性能を追求したスポーツカーという趣では、ほかにもっと驚くようなクルマがあるだろうというクルマでした。

けれども、なんて心に響くクルマなんだろうと強く感じたんです。なんて楽しいクルマだろうという感覚が、運転操作のすべてから返ってきて、五感が震えるというか、ワクワクする気持ちが止まらない。それなのに、まったく神経質なところがなく、もっと言うとやさしい気配に包まれたままクルマを走らせることができる。少しずつ運転に慣れてくると、もっと上があるよと穏やかに次のステップを教えてくれる。そこへ到達すると、ほら次はここだよとまた教えてくれる。

目からうろこが落ちるような思いでした。こいつは実は生きていて、自分のことを見ているんじゃないかと本気で感じることがあるほど、人間っぽいクルマにやられちゃったんです。アルファロメオに完全にやられちゃったんですよ、僕」

38歳のとき、勤めていた会社を辞め、ガレージゴトウを興した。不要になったプレハブ小屋の材料一式を譲り受け、すでに後藤さんの整備を受けていたクルマ仲間と一緒に建て、四六時中そこでクルマと触れ合う日々が始まった。さっきまでピストンの加工をしていた工作機械がぎっしり並んだ小さな建物が、33年前、後藤さんが第2の人生をスタートさせた空間である。
「あっという間でしたね。もう72歳になりました」

昔よりもずいぶん細身になったことは、少しサイズが大きく見える着慣れたツナギ姿が気づかせてくれた。

「メカニックというのは、体力が必要な仕事ですから。いつまで現場に立てるでしょうかね。部品の加工作業は、まだまだ大丈夫だと思うんですけど」

後藤さんのファンにとっては少しギョッとするようなことを口にした後、息子が少しずつ整備の腕を上げているんだという話をうれしそうにしてくれた。

「いや、大丈夫。まだ引退しないから大丈夫。試してみたいことがまだまだあるんです。もうずいぶんいじくったはずなのに、こういうチューニングをしたらどんな結果が出るんだろうっていう興味が尽きないんです。だから、まだ大丈夫ですよ」

そう言って大きな手で頭を掻きながら魅せる人懐こい笑顔に今日も出逢えた。

工場を後にした帰り道、後藤さんをクルマに例えるなら……などということをふと考え、思わず頬が緩んだ。繊細で技術的な造詣の深さがあって、けれども神経質過ぎることがなく、そして近づいても近づいても次のステージを用意できる奥深さを持っているクルマ。さっき、それはアルファロメオというクルマです、と後藤さん本人が言ったばかりじゃないか!
 

※2021年6月取材


撮影時の様子を記録した短い動画をFacebookにアップしておきます。
【コチラ】からぜひご覧ください。

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【上出優之利 写真個展「クルマの達人」】
  • ★7月15日(火)~26日(土) キヤノンギャラリー銀座
入場は無料ですが、休館日があるので以下のウェブサイトで詳細をご確認の上、お出かけください。
19日(土)15時からのトークショーでは、わたしもマイクを持たせていただきます。

【キヤノン公式ホームページ 上出優之利写真展「クルマの達人」】




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上出優之利 写真個展「クルマの達人」、開催

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上出優之利(かみで・まさのり)さんの、写真個展が本日から開催されます。テーマは、なんと「クルマの達人」です。

まずは開催概要から。
  • ★7月15日(火)~26日(土) キヤノンギャラリー銀座

入場は無料ですが、休館日があるので以下のウェブサイトで詳細をご確認の上、お出かけください。

19日(土)15時からのトークショーでは、わたしもマイクを持たせていただきます。


【キヤノン公式ホームページ 上出優之利写真展「クルマの達人」】



わたしが書くものをご愛読いただいている皆さんが写真展をより楽しんでいただけるように、上出優之利さんとわたしの関係について、少し書こうと思います。

上出さんとわたしが知り合ったのは、1990年代半ばだったと思います。

平成終焉のタイムリミットまで20年ほども残された、バブル経済の匂いがまだ日本を強く覆っていた頃、共通の知り合いだった女性が引き合わせてくれました。クラブDJとして活躍していた上出さんは、都内の多くのクラブでちょっとした顔で、彼がドアを開けて音楽轟くフロアに降りてゆくとパッと人が集まってくるという印象で、女にも男にもとてもモテていたことをよく覚えています。

当時原稿を書いていたREV SPEEDという雑誌で、クラブミュージックを支える音響機材とカーオーディオでのノウハウを絡めて紹介する記事の連載を作ったのは、上出さんと知り合ってクラブに出入りするようになったことがきっかけでした。上出さんにもクラブミュージックの指南役として登場していただくようにお願いして、キャラクターイラストを制作したりもしました。もう30年以上前の懐かしい話です。

それから25年ほど、まったく連絡を取り合わない時間が過ぎました。仲違いしたわけではなく、お互いに必要さを感じない時期だったのだと思います。自分のことをもっともっと研ぎ澄ますことに専心する時間でも、あったのだと思います。

Facebookで、四半世紀ぶりに「上出優之利」という名前を発見しました。彼は写真を撮る人になっていました。

「モノクロのブルース」という写真集が、そこで紹介されていました。何げなくそれを覗いたことが、上出さんとの新しい付き合いを始めるきっかけになりました。

新宿・夜の歌舞伎町界隈で撮られた、いわゆるストリートフォトというジャンルの写真たち。すべての写真に写しだされたあからさまな人々の生。笑い怒り愛し泣き走り倒れ……美しく汚く。血潮流れる温もりのある限り続く生の歓びと哀しさと、無機質な都会との鮮烈な輪郭。

衝動 “上出さんに「クルマの達人」の写真を撮ってほしい!”

「2020年1月23日18時・上出さん達人写真打ち合わせ」とカレンダーに記録がありました。新宿南口の騒がしい安居酒屋で、写真を撮っていただきたいとお願いして、快諾をいただき、後日そのときまでの7年間写真を撮っていただいていたカメラマンに “好きな人ができた……” というようなお仕事終了のお願いを了承していただき、2020年4月27日に上出さんが撮影した写真と共に作った「クルマの達人」を世の中に届けることができました。連載「クルマの達人」の3人目の撮影者がこのとき誕生しました。

写真は、その掲載のために3月27日に上出さんが撮った「山口宗久」の姿です。トークショーの日以外にも、会場にお邪魔しているかもしれません。この顔を見たら、ぜひ話しかけてください。

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それからあっという間に、5年が経ちました。60回分の連載を一つのカタチにまとめてみたいという上出さんの想いが、今回の写真展を実現させました。ひとつの継続的に連続する自身の所作に、ファインダーを覗き続けてきた本人は何を見たのか。二歳先輩ではありますが、30年来の友人であり、仕事のパートナーである上出優之利さんの感性に、ぜひこの貴重な機会を通じて直接触れていただきたいと思います。






文中の「モノクロのブルース」は、以下のサイトでスライド-ショーがご覧になれます。ぜひ、ご自身が持てるいちばん大きな画面で、写真の全体が見渡せる少し離れた距離から感じてみてください。

【モノクロのブルース】



【上出優之利写真展「クルマの達人」】は、大阪でも開催されます。

9月2日(火)~13日(土) キヤノンギャラリー大阪




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NDスピーカーシステム、カップラーオン仕様に。

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NDロードスタースピーカーシステムを、完全カップラーオン仕様に変更しました。

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車両無加工・無改造をウリにしているyamaguchi speaker system なのになぜ純正スピーカー線のカップラーだけは切り落として加工するのですか? という質問というか、ぜひカップラーオン仕様にして本当に完全に無加工にしてほしいというリクエストをいただいたのが変更のきっかけです。

確かにそのとおりなんですが、2018年のNDスピーカーシステム開発時点ではメインスピーカーで使われているカップラーが見つからなかったことが大きな理由です。世界中のそれらしいウェブサイトを探しまくったのですが、純正スピーカーを見てもわかるとおり、オス端子側のカップラーはスピーカーのフレームに組み込まれたデザインになってるんですね。カップラーとして独立した部品は見つかりませんでした。

存在しないものは仕方ないし、どうせなら24Kメッキのギボシ端子を使った方が端子が錆びることによる音質劣化が発生しないという少し前向きに発想を転換して今日までやってきたというわけです。

当時は存在しなかったオス側のカップラーを見つけることができました。


ツィーター側のオス側カップラーはずっと存在していたのですが、今回同時に採用することにしました。

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NDロードスタースピーカーシステムでは、DSPパワーアンプを使用するときはツィーターとメインスピーカーを独立して制御する必要があるので新たにスピーカー線を敷設しますが、スピーカーシステムのみポン付け使用はもちろん、一般的な(DSP内蔵タイプではない)パワーアンプによるパワーアンプキットを導入する際も、スピーカー線は既設の純正線をマツコネ、あるいはセグメントオーディオの出力位置にある24ピン(または20ピン)のカップラーを挟み込むカタチでそのまま使用します。

今回、メインスピーカーとツィーターの側をカップラーオン仕様に変更したことで、純正の部品をまったく切り落とすことなく取り付けが可能になりました。


ちなみに、将来DSPを導入してバージョンアップしたくなったときのことを考えて、ツィーター側はネットワーク回路を取り外せば24Kメッキのギボシ端子仕様にできるようにしておきました。メインスピーカーをDSP制御する際には、エンクロージャー内部に組み込んだ回路を除去するためにどのみち分解しなければならないので、その際に24Kメッキギボシ端子に組み替えるということにしました。

お申し込み・お問い合わせは、以下のページからお願いいたします。


【yamaguchi speaker system model ND】




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NDロードスターで実現、新しい“最高な”標準

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NDロードスターでyamaguchi スピーカーシステムのフルシステムを楽しむもっともベーシックな方法は、NDスピーカーシステム、KAI サブウーファー、BassPLUS+、SR5.600パワーアンプで仕上げるキットです。

DSPアンプ導入以前にシステムとして完成させて、ながらくNDロードスターの最上位フルシステムとして設定していた内容は、今でも「ロードスターでこの音楽空間はあり得ない!」という評価をいただけると自負しています。

ただ、車両へのねじ穴一つの加工なく巨大なSR5.600というパワーアンプを車両へ取り付ける為に、トランクの左隅に取り付けボードを組み込む必要がありました。気にならない人にとってはどうということのないサイズですが、機内持ち込みサイズのスーツケースx2が積み込めるように考え抜かれたNDロードスターの機能を損ねてしまうことが残念でした。

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SR5.600というパワーアンプは、左右のスピーカーシステム、左右のBassPLUS+、KAI Subwoofer を1ボディで駆動することができる4ch + 1chの効率的なパワーアンプです。けれどもサイズが大きく、これまでこの写真の「2」の位置でなければ取り付けができませんでした。


今回、このSR5.600パワーアンプを、外からまったく見えない場所へ、つまりトランク容量を完全に100%確保したまま取り付けるための技術的な目処が立ちました。もちろん車両への加工は一切不要で、その他の収納スペースもすべて確保したままです。

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この写真の「4」の位置にSR5.600パワーアンプが装着できるようになりました。内装材の裏側に取り付けるので、トランク容量は100%純正のまま。外観も、この眺めのままです。


大きな容量の電源を扱う機材ですから、もし事故に遭遇してもとっちらからないためのしっかりした取り付け強度は必須です。その上で、トランク容量を完全に守るためのスペース効率を求める必要があります。これらを両立させるために、取り付けボードにCFRP(ドライカーボン)を使用します。価格はこれまでのトランク左側への取り付け方法に対して+2万円になりますが、ロードスターにとって貴重な積載空間をわずかも減らしたくないという方への新しい取り組みです。外観が純正とまったく変わらないという点に価値を感じてくださる方もいらっしゃると思います。

これまでどおり、トランク左側面への取り付け方法も製作しますので、お申し込み時にご相談ください。

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SR5.600パワーアンプ装着テストの様子です。



SR5.600パワーアンプを使用するキットは、自動車の内装を難なく分解・組み立てできるという腕をお持ちの方であれば、DIYでも取り付けられるように詳しい説明書を付けてキット化されています。デッドニングや車体への加工も不要です。セグメントオーディオ、マツコネ(BOSEあり、BOSEなし)のすべてのNDロードスターに、音楽を浴びるために出掛けようと思える音楽空間を添えたい方の為にハンドメイドで製作するMade in JAPAN の逸品です。

製作期間は混み具合等によって変動しますが、最長3ヶ月ほど掛かります。早めのお問い合わせをお待ちしております。

お申し込み、お問い合わせは以下のページからお願いいたします。SR5.600パワーアンプを使用したフルシステムは、システム構成チャートの「5番」です。

【yamaguchi speaker system model ND】



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2025オアシスロードスターミーティングで会いましょう。

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ただいま午後6時半、西へ向かう新幹線7号車でカチャカチャとこれを書いています。

明日、5月11日(日)は、2025オアシスロードスターミーティングの開催日です。今年も“yamaguchi speaker system”として出展させていただきます。

今年の試聴出展車両はNBロードスターとNDロードスターの2台です。

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どちらも3Dフルシステムで仕上げていますが、NBには今回初めてお披露目するNB専用のサブウーファーキットが搭載されています。車両への加工や改造を行わず、インテリアのデザインも純正状態まった同じまま楽しめること、というyamaguchi speaker system のコンセプトを貫くには、とても難しいNBロードスターでした。NBロードスターのオープンエアドライビングに、こんなに豊かで精緻で表情豊かな音楽を連れ出せるようになったのか! という体験をしていただければと思います。

『yamaguchi speaker system ステッカー』もわずかですが持参して販売します。スピーカーシステムをご愛用の方のみへの提供となりますが、ご希望の方はぜひお声がけください。"yamaguchi speaker system"ロゴ3枚セットで1,100円です。ステッカーをお求めの方で、パワーアンプキット、DSPパワーアンプキットによるフルシステムをご愛用の方には "YAMA SOUND" ステッカーをプレゼントさせていただきます。

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“yamaguchi speaker system” ステッカー、作りました。

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“yamaguchi speaker system” をご愛用いただいている皆さんの為にステッカーを作りました。

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ナンバープレートの隣りに貼っても、トランクリッドの隅に貼っても、サイドターンシグナルランプの下に貼っても、クルマのデザインを邪魔しない小振りなサイズのロゴステッカー x3色と、富士山を臨む湘南・日本で生まれる ”YAMA SOUND” を表現した “和 テイスト” なカラーの1枚です。

このステッカーを目印に、聴かせてもらえませんか? と声を掛けてくる人が出てきたりして、そこからまた人と人の新しい繋がりが生まれたりして……。そういう素敵な化学反応のきっかけになったりすればいいなとか、わたし的には思っています。

ご購入についての詳細は、
コチラ ご覧ください。




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「クルマの達人」の取材風景に想う。



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先日、京都で行った「クルマの達人」の取材風景です。
今では雑誌に寄稿している唯一の記事です。
自動車整備の現場で働く職人を訪ねて原稿を書き始めてから30年経ちます。CarExという雑誌で連載していましたが同誌の休刊に伴い、掲載の場所をカーセンサー誌に移し連載名を「クルマの達人」に変更してから26年になります。

「クルマの達人」の写真を撮ってもらっているカメラマンは、上出優之利さんです。26年間を3人のカメラマンに撮ってもらいました。上出さんは三代目です。

今年の7月(東京)と9月(大阪)、上出優之利さんが写真展を開催されます。写真展のテーマは「クルマの達人」です。

詳細は後日改めてお知らせします。
ぜひお運びください。わたしも観に行きます。


想えばよい時間が続いたものです。ほんとうに。




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スピーカーシステムがアメリカ製になります。

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“yamaguchi speaker system”の 製作、販売体制がこの秋、大きく変更になります。

まず、すべてのモデルの製作地がアメリカになります。販売の拠点もアメリカになり、当地より世界に向けて航空便で発送することになる予定です。

今のところ、新しいモデルの計画と開発は、引き続きわたしが日本で行うことになっています。

まだ詳細はお伝えできないのですが、数年前から始まった動きがいよいよ具体的になり、現在最後の詰めを進めている段階です。価格については、米ドルで設定されたものとなり、決済時点での為替で自動的に計算されることになります。すでに以下に示した「ヤマグチスピーカーシステム」のウェブサイトに米ドル価格が参考値として掲載されているので、ご参照ください。

【 yamaguchi speaker system 】


思えば2011年、あの頃系メルセデスW126用、W124用の製作を始めてから14年、のべ1,000セット以上のスピーカーシステムをすべてわたしがハンドメイドで製作してきました。ほんとうに、ただの1つもわたし以外の誰かが作ったことなく、振り返るとよくこんなにたくさん作ったものだと感慨深くもあります。もちろん今後も、わたしが製作にまったく関わらなくなるということはない予定ですが、いったん別体制で動き始めてしまった後のことまでは約束できないので、注文をいただいたスピーカーシステムについて茅ヶ崎ガレージでコツコツと作り進めるのが目下のわたしの日常だったりします。「今後はmade in U.S.A.製品を買ってください」というアナウンスをさせていただくタイミングは、一連のこの動きへの対応で製作作業をする時間がまったく取れなくなってしまったときということになると思います。

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もう1つ、お知らせがあります。

Iwama Yuki Audio Garage が活動を終了しました。主宰の岩間君の都合による幕引きで、前段でお知らせした体制変更とは一切関係ない動きです。開業1年半ほど、丁寧な作業でガレージのファンも少しずつ増えてきた頃だっただけにとても残念ですが、本人の決断なので致し方ないです。

今後のヤマグチスピーカーシステムの取り付け、セッティングについては、引き受けたいと手をあげてくださったファクトリーがすでに見つかっています。ただし、わたしが決めた取り付けに関するローカルルールをご理解頂くことから始まって、配線の取り回し、スピーカーシステム本体のポテンシャルを目一杯引き出すための取り付け手順など、ヤマグチの流儀を踏まえてそれ以上の作業をしてくださる方です! と皆さんに紹介させていただく日までの取り付け作業については、わたしが茅ヶ崎ガレージで直接行います。さすがにとんでもなく忙しくなること必至(すでにちょっとヤバいです)なので、お待たせすることになってしまうと思いますが、Made in Japan, Made by Yamaguchi, Installed and Set-up by Yamaguchi の全ヤマグチシステムを提供させていただく恐らく最後の短い期間ですので、これを逃すわけにはいかん! と思っていただける皆さんからのお申し込みをお待ちしています。





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NBロードスタースピーカーシステムウェブサイト更新

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NBロードスターyamaguchi speaker systemを紹介するウェブサイトを更新しました。

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システムの構成表も掲載しましたが、少し専門的な内容でわかりにくい方もいらっしゃると思います。具体的な相談は個別に伺いますので、どうぞ下記のウェブサイトからお申し込み、お問い合わせください。

【 NB Roadster yamaguchi speaker system 】



ウェブサイト中でも紹介している動画へのリンクを貼っておきます。まだ試作版サブウーファーとの組み合わせで撮った動画ですが、ぜひ音質のよいヘッドフォンで聴いてみてください。7分30秒あたりから音楽を再生しています。

【NB Roadster speaker system sound DEMO】




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ポルシェ911スピーカーシステム ウェブサイト更新






ポルシェ911空冷モデル(993、964、930)yamaguchi speaker systemを紹介するウェブサイトを更新しました。

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システムの構成表も掲載しましたが、少し専門的な内容でわかりにくい方もいらっしゃると思います。具体的な相談は個別に伺いますので、どうぞ下記のウェブサイトからお申し込み、お問い合わせください。

【 PORSCHE 911 yamaguchi speaker system 】



ウェブサイト中でも紹介している動画へのリンクを貼っておきます。DSPフルシステムを搭載した993を使った解説が主の8分ほどの動画ですが、5分20秒あたりから音楽を再生しています。ぜひ、音質のよいヘッドフォンで聴いてみてください。

【PORSCHE 911 system sound DEMO】




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「S124 3D system 受注開始。」






S124(ワゴンモデル)の音楽空間的難しさとは、室内の細長い筒形状、さらに具体的に言うと、リア(ドア)スピーカーより後方にドーンと長大な空間が存在していることに一因があります。この空間は、フロントシートに座った乗員の耳の位置とリア(ドア)スピーカー間の距離よりずっと長く後ろに伸びています。さらにこの空間の床板は、走行時にずっと鳴り続けています。耳の奥にモヤッとする圧を感じたら、それはリアシート後方に広大に拡がった床板のドラミング音です。さらに速度を上げれば上げるほど、リアゲートの外側には強い負圧が発生し、リアゲートを引き上げようとする不規則な応力により、これもまた鳴り続けます。これらのことは、S124に限ったことではなく、ワゴン形状のボディを持つすべてのクルマに共通した弱点です。加えてS124のリアスピーカーはドアのインナーハンドルという低い位置に装着されているので、フロントスピーカーがダッシュボードの上方に拡げた音楽の音像を、グンと引き下げる傾向があります。

かつて製作をしていたS124のリアドアスピーカーは、ごく小径のスピーカーユニットであること、yamaguchi speaker system で唯一エンクロージャーを持たないフリーエア駆動であるこから、音量的にとても控えめな製品でした。このことが幸いして、音像を床に向かって引き下げる悪影響は薄く済んでいましたが、もっと大きな音でしっかりとした仕事をさせようとすると、必ず音像に与える悪影響についての落とし前をつけておかないといけない存在というわけです。

斯様に、S124の音楽空間創造は、セダンやクーペモデルに較べて難しく、音による積極的なコントロール不在のリア空間と、音像を引き下げる低い位置で鳴るリアドアスピーカーについて、どういう解決方法があるだろうとずっと思慮してました。


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S124 3D system を開発しました。

特許申請中のNDロードスター3Dシステムがほんとうに大好評で、装着されたオーナー諸氏が口を揃えて、もうフロントスピーカーだけの平坦な世界には戻れないと絶賛してくださいます。この仕組みの開発経験と、数多くの装着を通じて得られた数多くの感想を追い風に、S124とじっくり向き合って開発しました。もっとも効率的に3D効果が得られるように……というより、前述した広大な無法空間を積極的な制御下に置くことに念頭に製作しました。DSPのセッティングデータのロジックは、ロードスターとまったく異なります。

言うまでもありませんが、実際の視聴に於いてS124 3Dシステムの存在感はほぼゼロです。ステージに背中を向けてライブを観るような不自然さは、わたしのもっとも嫌うところです。ほとんど存在感がないのに、3Dシステムをオフにすると明らかにもの足りなくなる存在感。フロントスクリーンに拡がる音楽の景色の中から、ボーカルやギターの躍動だけ目前に浮かび上がる感じ、リアドアスピーカーを鳴らしていてもこれまでより一段高く、目前の高さに浮かび上がる音像。

そんなS124 3D system の受注を開始しました。
効果のキモとなっているDSPのセッティングデータの書き換え作業を含めて、35,000円(税別)です。取り付け工賃は30,000円(税別)で、2泊3会場のお預かりが必要です。

DSPパワーアンプ未装着の車両では、8チャンネル分のパワーアンプが内蔵されたDSPパワーアンプを購入していただくことが必須になります。かつてDSPセッティングメニューを実施していただいたS124では、AP8.9bitという8チャンネルパワーアンプ内蔵の機材が使われている場合は上記の費用だけで実現できます。もし、AP4.9bitという4チャンネルパワーアンプが使用されている場合は、上記の他に4チャンネル分の小型パワーアンプを追加する必要があります。持ち込み機材を使用したセットアップはお断りしています。

具体的な相談は個別に伺いますので、どうぞ下記のWebサイトからお申し込み、お問い合わせください。

【 W124 yamaguchi speaker system 】



ちなみに、この動画は S124 3D system の開発過程で記録したものです。奥行き感やBassPLUS+が体に伝える音楽の要素についてはここで再現すべくもないのですが、各楽器の生々しいエッジや、胴の深さ具合が見えるようなドラムスの響きあたりが好きと感じてもらえれば、きっとあなたとわたしの音楽的な感性は近いと思います。何を聴いても満足してもらえるはずです。ぜひ、音質のよいヘッドフォンで聴いてみてください。


【S124 3D system sound DEMO】




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「クルマの達人」を続ける理由。






「クルマの達人」の取材に出掛けてきました。
2005年に知り合って、その頃はたぶん50代だったよねと話して、71歳だけどまだレースやってるよ走ってるよ、と。

なんだ、今日呑みに行くんだと思ってウキウキしてたのにさ、だって。昨日は崎山さんから電話が掛かってきて、今日は何度もほんとに帰っちゃうの? となつっこく話してもらって。

「クルマの達人」の仕事がわたしのプライベートに添えてくれたもの、頭が下がるような仕事ぶりを納めた大人たちにガキのようにかわいがってもらえること。

四半世紀をとっくに越えた連載、まだ続けてみようかなと思う瞬間。

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写真:上出優之利


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2025年2月の出来事。






2週間ほどアメリカに行っていました。この歳にして新しい挑戦を始めています。今回の渡米は、ほぼすべてそのことに関わることに終始する日程でしたので、ほんとうに“脳”が疲れました。

渡米中、もう一つ大きな出来事がありました。帰国の途に就く2日前に父が他界しました。息を引き取る3時間ほど前に、実家で付き添ってくれていた弟がつないでくれた"FaceTime Video 通話" で画面越しに声を掛けたのがわたしと父の最後になりました。出発する時点で、あと2週間はもたないかもしれないと宣告され、日帰りで宝塚の病院まで会いに行き、翌日は茨城県で取材、そしてその翌日には機上の人となったわけですが、もし父に意志を伝える能力が残っていたら、行って仕事を決めてきなさいと送り出されたに違いないと信じての出国でした。あと3日早く帰れていればという心残りがないわけではありませんが、いまわたしの何が父への報いになるのかは、この渡米において至極明快だったりもします。成田→伊丹と乗り継ぎ、大きなトランクを抱えたままタクシーで葬儀場へ向かい、すっかり夜遅くになってしまいましたが棺に納まった父と再会することができました。そして翌日、荼毘に付すところまで、いちばん大変なときにのこのことアメリカに出掛けていたわたしには、あっけないほどあっという間でした。そのあたりのすべてをこなしてくれた、弟と母には感謝しています。

葬儀の日、火葬炉から出てきた寝台を、お骨上げのために親族が待つ部屋まで係の人と一緒に押す役目を受けたことで、一つ思ったことがありました。まだ顔面に浴びるような熱気を帯びた金属製の寝台の上、体の様に並んだままの父の遺骨と対面したとき、いろいろなことを思い出すと同時に、楽しかったり怖かったりした父との時間は一体何だったんだろうと理解すればよいのか、そんなことを思いました。世の中で何よりも確実なことは、誰ひとりの例外もなく必ずみんなここに至るのだということなんだと思いました。生を受けることは奇跡ですが、死を迎えることは生を受けたものに共通する必然です。その間の数十年の出来事や、それらが自他に残す結果や記憶って、当人にとっては間違いなく、そして他人や世の中にとってもほぼすべて、当人が生きている限りの有限事象なんですね。輪廻転生という宗教観を否定することはしませんが、化学反応、電気反応として発生する当人を特定するようなあらゆることは、間違いなく数十年間の有限事象だと、真っ白になった父の姿にそんなことを思う不謹慎な息子こそ、紛うことなき彼の作品だったりもするわけですが。

そんな慌ただしすぎる2月も終わり、今は父を看取ることを半ば諦めてまで挙行したアメリカ行で進めてきたことを、今年後半の仕上げに向けて1つずつカタチにしているところです。失敗しても無関係な人にいろいろ言われても思われてもなんでもかんでも、やったもん勝ちだなと、わたしの顔面を灼く父の骨に会った時にそう思ったことが、大忙しだった2月の締めくくりの出来事だというわけです。

写真は、父がくれた本に挟んであったメモ書きです。日付けを見ると、わたしが29歳のときですね。ケガニさんのマネジャーを辞めて、"Car Ex"という自動車雑誌の編集部がデスクを用意してくれたフリーの編集者2年目くらいの頃だと思います。今のこのタイミングにふとこういう紙切れが出てくるあたり、大きな会社に入ることもせずに漕ぎ出した社会人としての人生、この歳になっても相変わらずフラフラと浮き草稼業を続けていることを未だに心配されているような気分になります。でもまあ、「元気で頑張って下さい。」と締めくくってあるので、そうすることにします。

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父・山口周三 2025年2月23日永眠。享年92歳。

お疲れ様でした。ありがとうございました。






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「audison B-CON」登録名変更の方法






2025年現在、車内で音楽を楽しむ為の推しメディアは、LDAC接続が出来るBluetoothガジェットに収録された高音質のFLACファイル音源一択と言っていいと思います。具体的なガジェットで言えば、ソニー製のAndroidケイタイ「xperia」(LDAC非対応の一部機器を除く)、または同じくソニー製「WALK MAN」を選択すれば間違いないです。

車載のレシーバーは、audison製「B-CON」か、audio-techica製「AT-HRD300」の2機種が浮かびますが、わたしは「B-CON」をお勧めします。AT-HRD300はテスト用に2台購入しましたが、どちらもあっという間に壊れてしまいました。信頼性がかなり疑わしいと判断し、以降どなたにも勧めていません。

というわけで、レシーバーは「B-CON」一択というわけですが、複数台の愛車をお持ちの方から「音楽プレイヤーのBluetooth 候補に愛車の数だけ "Audison B-CON” という接続候補が並ぶんだけど、この表示を任意に変更できないだろうか」という問い合わせがありました。Bluetoothの仕様規格に、前回接続した機器とはその危機を感知し次第自動的に接続する、というものがありまして、愛車が1台だけで、ケイタイガジェットを自宅や職場などのオーディオやヘッドフォンにBluetooth接続しないのであれば、愛車のエンジンを始動する度に自動的に接続が完了するのですが、それ以外の場合は、ガジェットを操作して、どのBluetooth機材に接続するのかを選択する必要があります。

複数台の愛車のそれぞれに「B-CON」が装備されている場合、ガジェットのBluetooth機材のリストにずらりと並んだ「Audison B-CON」という表示の中から、今乗車している愛車の「B-CON」を当てなければならないという無駄な作業を強いられることになります。

W124のB-CONは「W124...」、ロードスターのB-CONは「Roadster...」という具合に名前が付けられませんか? というわけです。

これ、できます。

xperia の場合は、「設定」→「機器接続」→その車両の「Audison B-CON」の右側のギアマーク→「画面右上隅の鉛筆マーク」→「表示されている名前をタップ」すると文字入力画面に切り替わります→入力完了後「名前を変更」をタップ、すれば 接続機器を任意の名称に変更することが出来ます。

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iPhoneの場合は、「設定」→「Bluetooth」→名前を反抗したいB-CONが ”接続済み” 表示になっている状態で右側の「i」をタップ→「名前」と進めば、名前を変更できる画面に進めます。

「 "audison B-CON" 登録名変更の方法 iPhone編」 facebook投稿動画


以上、参考になりましたでしょうか。






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ロードスター12Rと普通の2リットル






オートサロンで発表された
2リットルエンジンのロードスター幌車x2種類、長い前振り期間を経てようやくの発表だが、発表後も相変わらず賛否があるようだ。さくっと眺めて回っただけだが、ネット上ではけっこう罵倒に近い言い合いになっている様子も散見される。

価格のことを言う書き込みが多く目に留まるけど、価格は全然高くないと思う。絶対額の高い安いという感覚は、その人の収入かまたは価値観が支配的なので、公の場で議論になりにくい要素と感じる。なのでもう少し正確に言うと、割高ではない。

アメリカでのロードスター幌車(もちろん2リットル)の販売価格は、約3USD〜。本日の円・ドル相場が158円/USDなので、円に置き換えると480万円〜。オートサロンで発表されたスタンダード仕様の2L幌車が500万円台。グローバル価格設定としては、ちっとも高くない。むしろ為替のことだけで考えると、1.5の幌車=320万円〜、RF380万円〜という日本の現行価格がとんでもないバーゲンプライスになっている。もしこの日本価格が、1USD115円のとき(3年前)に設定されたものなら、1.5の幌車の価格はアメリカ仕様を基準には計算しにくいけど、RFは今すぐに530万円〜に変更されてもおかしくないことになる。

同じく、700万円後半と発表された特製仕様の12R。仮に800万円だとすると5USDとなる。105円/USD(4年前まではこんな感じだった)なら525万円だった、本日現在 158円/USDなので800万円。2021年だったら200台限定の特製車が525万円で買えたのにというだけの話で、実はちっとも割高ではない。

肝心なことは、そこではない。なにしろ説明不足が度を超している。


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写真:マツダ株式会社


1989
年以来、マツダがというより、むしろユーザーたちが築いてきた世界的にも希有な「ロードスター"仲間"」と呼んでも過言ではないユーザー同士のコミュニティ的な雰囲気が、高いだの安いだの(30004000万の話じゃないんだよ、たかだか500800万程度の話なのに)、速いだの遅いだの(500馬力800馬力の話じゃないんだよ、何年も前から売られている現行のハチロクの方がずっと速いという程度の話なのに)ということでグラグラになってしまっているような気配を感じる。モデル4世代にわたってヒエラルキーのないほんとうに希有で素敵なユーザーたちの世界観に、メーカーが競争原理を持ち込むのであれば、なるほど! と納得できるような、もっといえばそれを糧にさらに"仲間感"が深まるような懇切丁寧な説明が不可欠。

「手組みで特製なので800万円、素のやつもあるよ500万円。1.52.0かは自分たちで決めてね」

これでは、35年間ありがとうございました、みたいなことになっちゃうんじゃないかということに、個人的には気を揉んでいるわけです。だって、未曾有の好景気という奇跡の時代背景も助力になって町場で自然に生まれて育ったこの雰囲気(つまり「文化」です)ですから、一度崩れたら修復不可能だと思うから。ロードスター界隈を包むあの雰囲気を「文化」と定義するなら、少なくともメーカー主導(それがマツダでなくても)で再生・構築できることではないから。生活実用車の枠外に販路を求める種類の自動車が常に抱えている、民の心離れたらオシマイ、というキワキワの線をよくぞ35年間もトレースできたものだと心から尊敬しているから。





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「ヤマスピ_TEST_SONGS_01」






明日から仕事始めという方、多いんじゃないかと思います。わたしは年末から椅子に座っていられないほど体調を崩しちゃいまして、とうとう帰省も適わない年越しでした。1年間の疲れを世の中が停まる年末年始に吐きだして調整を図るこの自律系安全装置、3年に一回間隔くらいで発動するので、まあ正常ということでしょう、あはは。

さて昨日、NHK紅白歌合戦をインターネットのサービスで観ました。なかなかよく考えられた出演者の選定でよかったと思いました。B'zを観ながらスマホで調べたんですが、稲葉浩志ってわたしと誕生日が1週間ほどしか違わないんですね。自分もまだもう少し頑張れるかなと思わせてくれました……って、いったいMacの画面の中になんの幻想を見たのか。あはは、泣けてきます。

でですね、Superfly も出てましたね。"Beautiful"という曲を演ってました。イントロが流れた瞬間、”ああこの曲っ”って寝ぼけた体が少し覚醒しました。

「Superfly」、めっちゃ難しいんです。

なにが難しいかって、カーオーディオで再生するのがものすごく難しいんです。最近のポップスにしては珍しく、リミッターやコンプレッサーの掛かりがすごく薄い気がします。機材を使って音量のピークが振り切れないように抑えることで全体の音量を持ちあげ気味にして音圧を高めてパワフルな感じを演出するというのが、今どきのレコーディングの流儀だと思うのですが、Superfly はどの曲もそれぞれの音の突き抜け感をとても大切にしている感じがします。つまり小さな音から大きな音までの振れ幅が、それぞれの楽器で大きいように感じるんです。しかも盛り上がりポイントで鳴ってる音の数がすっごい多いです。おまけにけっこうな編成のストリングスはボーカルとかなり近い音域でかなり派手に弾いてくれちゃってます。ボーカルも負けじとワンワン歌い込みます。一気に何もかもがうわーって鳴る感じの盛り上がり方が Superfly の特徴なのかな、と。

ところがこれを、15センチくらいの小さなスピーカーで鳴らし切るのってほんとうに難しいです。再生ボリュームが小さいと、きっとメンバーが目指しているこれぞ Superfly という盛り上がりを感じることができません。けれどもボリュームを上げると、こんどはなにを演っているのかわからないような音団子になってしまいます。ときにわたしの仕事部屋のオーディオは、PA用のスピーカーと小スタジオ用のパワーアンプという業務用機材の組み合わせなので、オーディオマニアの方々に喜んでいただけるような色気ある眺めと無縁ですし、朴訥で淡々とした音ですが、イベント会場とかで遠くまで届くような鳴り方を使命として作られたものたちなので、民家の屋内で楽しめるくらいの音量ではまったくグシャグシャになることなく斯様な Superfly も機材の許容範囲の中に完全に収まっています。散らかった仕事部屋ですが、こんな感じです。

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この感じをクルマの中で、あの頃系メルセデスなら7センチ、ロードスターの各モデルでは10センチの直径しかないユニットで実現しようという壁をよじ登っているときに聞きまくったのが、Superfly のBeautiful という曲なんです。ちなみに Superfly、ある程度以上のクオリティのヘッドフォンなら、けっこういい感じに聞こえることも確認しています。ヘッドフォンの場合、大きな音で聴いていると感じていても、実はそんなに大音量にはなっていませんし、鼓膜の直近でどういう案配で音を震わせればいい感じに聞こえるのかという研究がしっかりできているんだなと感じます。もちろん、今どきの視聴環境の傾向を考えると、制作側も当然ヘッドフォンで視聴されることを想定したマスタリングをしているはずです。ただ、ヘッドフォンは耳でしか音楽を感じることができないのが残念で、わたしが目指している音楽空間の世界観とはまったく異なります。

Amazon Music のプレイリストとYOUTUBEのリンクを貼っておきます。

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「ヤマスピ_TEST_SONGS_01」 Amazon Music



イントロのギターのクランチトーンの絶妙なざらつきをまるでギターアンプの前にいるような粒立ち感で浴びる音量感のまま、サビに入ってもグシャッとしないまま爽快に聴き抜けられる感じ。特に3分37秒辺りからエンディングに向かって大盛り上がりのアレンジを「うるさい!」と感じないまま音楽に没頭できるように楽しむことができるオーディオを愛車の中に持ち込めたら、ドライブしながらトキメキまくれたらどんなに素敵だろう、というのが、わたしがyamaguchi speaker system で目指しているイメージだったりします。

1曲だけだと淋しいので、EGO-WRAPPIN' の「老いぼれ犬のセレナーデ」もプレイリストに加えておきました。これもスピーカーシステムの開発とセッティングで使う定番楽曲です。なにしろ空間感が素晴らしい音源で、右手の指を離れる瞬間のウッドベースの弦のテンション感や指板と弦が触れる音、ギターの音から録音したスタジオの広さが見えてくるような、そういう空気感のトキメキをチェックするときに思い出す曲です。今どきはインターネットでいろんな情報が手に入るので、いったいどういうギターを使うギタリストなんだろうと思って調べてみて、こういうギターと、なになにヤマハのトランジスタアンプがお気に入りなのかか、なるほどね、こういう感じの音がしそうだねなんて、そんなことも楽しい、そういう音楽空間を身近に持っているってほんとうに人生を楽しくするよなってそう思うわけです。

ぜひ、ご自身の愛車でこの2曲を試し聴きしてみてください。そしてもし、この2曲についてヤマグチはどう取り組んだのよ? ということに興味を持っていただけたのなら、いちど試聴してみてください。

試聴していただけるNDロードスター(幌車/アバルト124スパイダーも同型です)は都内か大井松田にあります。W124は茅ヶ崎です。PORSCHE 993(964も同型です)、NAロードスター、NCロードスター、S124、A124は、オーナー氏のご協力が必要ですが、ほとんど神奈川県内にあります。

いずれも、I.Y.A.Garage の岩間くんに電話をして問い合わせてください。電話を掛ける時間帯は、常識的な範囲でお願いいたします。
090-7630-1461



というわけでさてさて、明日から世の中が動きます。わたしも遅れないようについてゆこうと思います。



Superfly『Beautiful』/YOUTUBE


Ego-Wrappin' 『老いぼれ犬のセレナーデ』/YOUTUBE





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2025年






新しい年が始まりました。

カレンダーの色感覚が長年のうちにすっかり衰退してしまった身にはこのような特別な区切りがなかなか生活に馴染まず、昨日も今日も茅ヶ崎の自宅で普通に仕事をしていたりするわけですが、日本古来の年中行事に無垢な気持ちで浸ることさえうしろめたいほど追われ続ける日々は、確かによろしくないと確信できます。


三十代の頃、東京・三田の崎山自動車の崎山さんに、「ねえ、ヤマグチくんの原稿はいくらで買えるの?」と訊かれて、あ、それはいろいろなケースがありましてとか、つべこべ言っていると「まだまだだねぇ。自分の値段くらい即答できないと」とパチンとやられたことがありました。

それから30年ほど経っているわけですが、この課題を未だにクリアできてない自分です。

自分に自信がないのに身の丈を超えたプライドもある、というこの完全に社会人失格な感じは、実はずっと抱えている極度の対人恐怖症の癖と共に生涯消えないと思います。こういうことを意識すると今も手汗びっしょりな感じになっているわけで、まあ完全な病気です。

30年間クリアできなかったことを、新しい年になったからという理由で突然メリメリ越えられるとは思いにくいので、ますますこのまま突っ走ることを自分に宣言して、あと365日をなるべく手汗まみれにならない布石を打っておこうかなという、自分に向けての卑怯な本日のブログだったりします。


皆さまにおかれましては、より一層の飛躍ある一年であることを祈念いたします。
あけましておめでとうございます。



2025_0101

写真は去年の秋、取材中の一コマです。
上出優之利さんが撮ってくれました。




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