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大好きなクルマと大好きな音楽と。

大阪の催【上出優之利 写真個展「クルマの達人」】

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雑誌連載「クルマの達人」の写真を撮っていただいている上出優之利さんの写真個展『クルマの達人』、盛況のうちに終了した東京の催に続き、いよいよ上出さんの故郷である大阪に会場を移し、本日(9月2日・火)より開催されています。

北区・中之島の《キヤノンギャラリー大阪》への道順等は、以下の キヤノン公式ウェブサイトをご覧ください。

【キヤノン 公式ウェブサイト】

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また初日の午後4時から1時間、上出さんによるギャラリートークが開催されます。「クルマの達人」という四半世紀を超える長期連載の表現者のひとりとして、どのように撮影の現場に立つのか、千差万別の表情をみせる被写体に向き合うのか、シャッターを切るのか。質疑応答の時間もあるので、皆さんの質問に対するスリリングな回答が聞けることと思います。わたしもマイクを持って袖に控えることになっていますので、会場で皆さんにお目にかかれることを楽しみにしております。


ところで、ギャラリーに展示される上出さんの写真は、すべて売り物であったりもします。実際、先日の東京の催でも購入された方がいらっしゃいます。A2サイズ個展展示現品で10万円を少し切る価格は、写真家の作品としては新進気鋭の作家に対する評価額として適正価格のようです。

作家と作品と評価とお金について、ふと思ったことを書いてみたいと思います。



昔、どうしても音楽関係の仕事がしたくて、そんなもので飯が食えるかみたいな半喧嘩のような父子のやり取りが大学を卒業する頃のわたしにもありました。どこの家庭にでもあるような光景だと思います。

そのとき父は、「コンサート会場に詰めかける何万もの人たちは全員音楽が大好きで、けれども大好きな音楽を提供する側はステージの上にいる数人ぽっちで、つまりその日会場に足を運んでお金を稼いで帰ってこられる人の割合は、一万分の1くらいだ。レコードを売って稼ぐなんてもっと低い割合だと思う。さてあなたは、数万人の先っちょの一人になれる自信があるか? あるいはそういう人たちを蹴落としてでも目立って認められたいというほどある意味がめつくなれるか?」と言いました。

軟弱なわたしはすぐにビビってギターを置いてしまったわけですが、作品づくりのための便利な道具が充実して、インターネットが普及して作品を世界に流通させる仕組みを安価で利用できる、そんな今の時代でも、創作して換金して生活を成り立たせてさらに次の一手のための糧を得るという一連の行為を連続させて生きてゆくことは、煎じ詰めればかつて父がわたしに言ったことと何一つ変わっていないと思います。

わたしより2歳年上の上出さんはもともとミュージシャン志望で、そのこと自体は我々の世代の男子の半数くらいは考えていたような青年の代表的夢想のようなことなのですが、実際に音楽を金にするための方法を模索するために上京して、バンド活動ではらちが明かないと悟ると実際に音楽制作の側に挑戦して、実際にクラブDJとしての活動も始め、実際に中森明菜の楽曲制作のような大きな仕事に携わることも経験して、2011年の東北大震災の非情を目にしたときに写真で遺す人になることを決意して実際にカメラを手にして、実際に撮影のために街に飛び出し、実際に作品集を自費で編纂(へんさん)して出版して、実際にフランスの展示会で作品を披露しキヤノンの公式ギャラリーで個展を開き、今や実際に写真を撮ることを生業とし、昨日も実際に連載「クルマの達人」の取材に同行して撮影を行い、来月も彼の写真は“上出優之利”のクレジットと共に実際に有料媒体に掲載され全国に流布されるわけです。

この“実際に”を実現するためのあれこれ……行動や発想や切り替えや思い切りや思い込みや勢いやあれこれ、おおよそ多くの人には躊躇されるような選択を、そのたびにしてきて“実際に”実現してきて今があるその作品があるという歴史が、欠かすことのできない作品の価値なのではないかと思うわけです。

写真の道へ進むと決めたとき、彼は音楽の道へ後戻りできないように所有する音楽機材をすべて手放し、ひとまず一銭にもならない作品づくりのために自分の時間の大半を注ぎ、まったく白紙だった写真に関わる人脈づくりのために足を棒にして人に頭を下げ、おそらくは生活のために苦虫を噛み潰すような思いも積み重ねつつ、ようやくの15年目に到達する今日を過ごしているということだと、想像します。

そのような経緯を経て目の前に存在する“写真”という作品を買うという行為は、単に欲しいものを手に入れるという消費行動ではないと思うんです。もちろん自宅の玄関に飾りたいとか、お気に入りのひとつとしてコレクションしたいとかいう目的があるかもしれませんが、その行為は上出優之利という生き方へのリスペクトであり、支払った金額の価値があることを買い手が証明しました、という動かぬ証拠を刻みアーティストを創ってゆくという文化的な行為だと思うのです。

もちろんそれは、余暇を使って趣味でサクッと撮った写真に価値がないということではまったくなく、そういう写真のほうが美術として素晴らしいとかそうでないとかいう意味でもありませんが、上出優之利という写真家がその1枚をそこに創造するに至った物語に与えられたのと同じ評価を得ることは難しいだろうと安易に想像できるわけです。

東京・銀座でのギャラリートークには、50人ほどの老若男女取り混ぜた観客が詰めかけ、質疑応答を含めて1時間半に及んだトークショーを立ち見で夢中になっていました。この人を惹きつける人間力が、作品の魅力であり評価であり、お金に置き換えられてゆくのだと思います。要は、写真作品魅力は、写真そのものだけではないだろうということです。



本日、大阪・中之島で開催されるギャラリートークには、どのくらいの人が集まるでしょうか。会期を通じてどのくらいの人が彼の作品を見に来るでしょうか。

「クルマの達人」の仕事を依頼した5年前、“あなたはきっとその人徳と実行力で海外で活躍するような写真家になるので、わたしはいま唾をつけにきた。”と上出さんに話しました。なにもかも自腹で突進してきた写真家としての活動に、日本だけでなく海外でも“評価の標し”としてお金を遺してゆく人が出始めていることをいちファンとして嬉しく思うと同時に、ひとつのコンテンツを共同で制作するパートナーとしていち早く仲間にすることに成功したヤマグチの選定眼の確かさにニヤニヤしたりもしていると、まあそういうわけです。

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NBロードスター スピーカーシステム 3Dフルシステム第1号

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NBロードスターのヤマグチ スピーカーシステム、3Dフルシステムを搭載してくださった方から、とてもうれしいメールをいただきました。

オーナー氏の承諾がいただけたので、メールの一部を紹介いたします。


『帰り道、音楽を聴きながら走りましたが、速度やトンネル等の外乱要素に影響されること無く、音楽がはっきり明瞭に聴こえることに凄く感動しました。

今までついつい無意識に音量調整をしていたのですが、そういったこと無く音楽と、そして運転双方に集中できることでクルマの楽しさ、ワクワクを再発見させていただきました。

免許を取って初めて運転したとき、自身の愛車で初めてMDを再生したとき、その想いが蘇りました。長年運転していると忘れてしまう初心を思い出せたのは、本当に得難い経験です。

素敵な音に出会えて、楽しいドライブができそうです。
昔聴いていた曲をまた聴き直したいと思います。』

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NBロードスター用のyamaguchiスピーカーシステムは、2022年にスピーカーシステム本体が完成しましたが、サブウーファーの開発が暗礁に乗り上げてしまい、フルシステムで楽しみたいとお考えの皆さんの期待に応えることができないままでいました。

NAロードスターのようにパワーアンプ内蔵のサブウーファーを取り付けるスペースがなく、わずかな空間を活かそうとするも、NBオーナーはロールケージを取り付けている割合が多いので対応すべきだという情報があり、そこで万事休す、打つ手見つからず止まったままになってしまったわけです。

で結局、2025オアシスロードスターミーティングへの出展に間に合わせるスケジュールで、ロールケージを装着していない車両のみに取り付けられる仕様として試作を再開。3作目の試作機を搭載したNBロードスターを展示しました。今回セットアップしたのは、その製品版の第1号となります。システム構成は以下の通りです。

★ NBロードスタースピーカーシステム(メインスピーカー、ツィーター)
★ NBロードスターサブウーファー(左右各1=1セット)
★ NBロードスター 3Dシステム
★ BassPLUS+
☆ audison AF M8.14 DSPパワーアンプ
☆ audison AF M4D パワーアンプ
☆ audison DRC MP-CAN コントローラー
☆ audison B-CON ハイレゾBluetooth



うれしいメールをくださったNBロードスターのオーナー氏も、NBスピーカーシステム完成後まもなくから、サブウーファーを加えたフルシステムの完成を待ち続けてくださいました。ゼロからのもの作り、しかも前例のない発想をカタチにしようとするときには、何が潜んでいるかわからない海路を進まざるを得ないわけで、かなりの頻度で暗礁乗り上げ事案が発生しています。あの頃系メルセデス、マツダ・ロードスター、空冷ポルシェ911のどのモデルも、船底を擦らずに完成まで事が進んだことなど一度もありません。それでも、ほとんどの場合は比較的短期間の間になんとか解決策を見つけられるのですが、完全に暗礁に乗り上げて打つ手が見つからなくなるケースも稀に発生します。NBロードスター用のサブウーファーは、完全にその事案でしたが、お待たせした皆さんにはほんとうにご迷惑をお掛けしたと思っています。

ただし、NBロードスターサブウーファーは、現時点ではリアサスペンションダンパーの付近にマウントベースを取り付けているロールケージを装着している車両への取り付けはできません。壺の中に突っ込んだ手を抜くためには、掴んでいた望みを一つ手放すしかなかったということです。


ブログ内でのメールの引用を快諾くださった返事にも、ひと言添えられていました。

『どうしても長年ドライブを続けていくと、初めて走る道、というのが減ってしまうのが悩みの種だったのですが、新しい音を携えて慣れた道を走りなおすとどう映るのか、それが楽しみです。
次の休みが待ち遠しいです。』


ロードスターに音楽はいらない、キミはロードスターのことを何も分かっていない、無駄だ。2017年に大勢のロードスターマニアにそう突き放されて、でも自分のつたない経験を総動員してイメージした“ロードスターで楽しむ音楽空間”をイチミリも諦めずに妥協せずに、もちろんクルマを加工改造せずに取り付けられるように。この世に影も形も気配も前例もないところに理想形を登場させることに伴う辛さも、このようなメールで救われるっていうものです。

ありがとうございます。
オジサン泣きそうです。





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ALPINA とは、なんだったのか。

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昨日届いたカーセンサーエッジ誌が玄関の下駄箱の上に置いてあった。袋を破ってパラパラとめくると、どうやらアルピナの特集らしい。今年、新しいブランドに加えるアルピナを、BMWがどのように仕立ててゆくのか。ミニ、ロールス・ロイスと、独英混合というとんでもなく難しそうなブレンドを見事に調合して新しい価値を創り出したBMWの次の一手、自動車業界以外からも大いに注目されていることと思う。

その一方で、嗚呼アルピナが幕を下ろすのかというさみしさもある。

E-21/3シリーズをベースに仕立てられた「C1-2.3」の写真が1枚でも掲載されていると、それだけの理由で自動車雑誌を買うような高校生だった。ルックスはもちろん、闇雲にパワーを求めないエンジンチューンへのこだわりや、たくさん売ることに燃えていないブランドの雰囲気が格好よかった。1つひとつの部品の選定にこだわり、誰が見てもBMWだけど一部の事情通には明らかにBMWではないアルピナであると認識させるくらいの加減が、ほんとうに格好よかった。



アルピナの特集をパラパラとめくりながら、2013年に出席したパガーニという自動車メーカーの発表会のことを思い出した。日本市場へ初めて参入する記念すべきモデルの発表会ということで、創立者のオラチオ・パガーニ氏の姿も会場にあった。わたしは彼のところに進み、こんな質問をした。

「730馬力で最高速が360km/h。この恐るべき高性能を楽しむ環境が日本にはありません。それでもこのような超高性能車を創って、日本で披露したいと思ったのはなぜですか?」

彼は傍らのパガーニに視線を落とし、そしてすぐにわたしの目を見てこう答えた。

“ It’s my dream.”

嗚呼、これぞもの作りの究極の姿、真髄だと感じた。誰かを満足させる価値ではなく、自己の表現手段としてものを創り、その想いの熱さに共鳴してくれる誰かとそれを分かち合う。誰かの夢を叶えるのではなく、それは“私の夢なんです”とひと言目に発したその言葉に痺れた。何万馬力でも何十億円でも、気が済むまで追いかけてほしいとずきゅんと感じた。

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アルピナといえば、創立者のブルカルト・ボーフェンジーペン氏について知らないわけにはいかない。彼もまた、自身の夢をカタチにするという表現行為が結んだ果実として、アルピナというクルマを世に送り出し続けた。

2005年にドイツのアルピナ社を訪ねて書いた原稿を紹介する。届いたばかりのカーセンサーエッジ誌に連載「クルマの達人」の掲載を確認するより先に、前述のようなことを思い出して懐かしんだ理由を皆さんと共有することができれば、とてもうれしい。

写真はすべて、取材を共にした橋本玲さんによる。

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アルピナとは、なんだったのか
アルピナを所有する歓びの理由とは

心に人生を謳歌する歌を持とう。目的を達成するだけでなく、そこへ迫りゆくドラマを楽しもう。そして、アルピナのステアリングを握ろう。アルピナの魂である“エレガンス”の意味は、そのときそこはかとなくあなたの全身を打ち振るわせるはずだ。アルピナとはそういうクルマ。それがアルピナの心。

小さなショールームを構えるアルピナの本社で我々を迎えてくれたのは、グンター・シュスター氏。セールスディレクターの肩書きを持つ彼は、アルピナの人になってから25年目を迎える。

「ご存じのように、アルピナはBMWの各モデルをベースに、独自の価値観を持ったクルマを送り出しているメーカーです。創立者のボーヘン・ジーペンが、63年にツインキャブを備えた1500を製作したことに始まり、翌64年にアルピナとして正式に発足しました。以来、常にボーヘン・ジーペンの考える理想の1台を生み続けているわけです」

今年で創立40周年を迎えるアルピナは、当初BMWの性能を向上させるためのパーツを開発、販売することを主な業務としていた。技術的なノウハウを磨くためのレース活動も盛んに行い、71年にはヨーロッパでツーリングカーと名の付く全てのレースでの勝利という快挙を収めるに至った。シルバーボディに若草色のアルピナストライプをまとったBMWが、サーキットを疾走する姿を記憶している人も多いのではないだろうか。彼らの技術的ノウハウやレース活動はBMWからも高く評価され、次第にBMWの一部門に等しい関係を築き上げていったのである。そのような過程を経て、83年には自動車メーカーの認可を獲得する。当時としては、小規模なコンストラクターがそのような立場を確立するというのは、異例中の異例であったことを考えると、この頃までに技術面だけでなく、メーカーとして必要な素養をすべて備えていたといえるのだろう。

「BMWアルピナ、としてメーカーの地位を得るまでの過程で、アルピナはどういうクルマを生み出す存在であるべきかということを盛んに模索していました。チューニングの手が加えられた高性能車というだけでは飽きたらず、もっと独自の価値観を主張する1台を生み出す存在でありたいという夢を追い求めたのです。そして我々が見出した答えこそ、あらゆる意味においてエレガンスを表現する企業であることでした。アルピナのフィロソフィは、そのようにして誕生したのです」

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ショールームの裏手へ進むと、そこにはまるで技術研究のような作業にいそしむエンジニアやメカニックが働くエリアが広がっている。清潔な床の工房では、1基1基のエンジンが完全に分解され、計測、加工といった手が加えられていた。アルピナとしてのシリアルナンバーが打刻されたエンジンブロックにマイクロメーターを当てる若いスタッフの横で、重鎮とおぼしき白髪の男が、トルクレンチでナットを締め込んでいる。そのフロアには十名ほどのスタッフがいたが、この人数で一体一日に何基のエンジンが組み上がるというのだろう。作業は丁寧で時間はとてもゆっくり流れている。

「腕のいいコックというのは、自分だけがおいしいと感じる味覚を持っているだけでなく、その味を望む人に提供できるだけの腕を備えていなくてはなりません。けれども10万人、100万人という人に理解してもらうために、その味を薄めてしまうことがあってはならないのです。我々は決して数を求めません。その代わり、我々でなければ生み出せない料理を確実にサーブし続けます。

いいですか、現代では工作技術が大幅に進化したお陰で、とても高い品質のものが大量生産できるようになっています。けれどもそれらは、あくまでも多くの人を満足させる最大公約数を考慮した既製品でしかないのです。テーラーメイドのスーツにしかないフィット感を望む人というのは、そのような既製品とは全く違う価値観を自ら選ぶ製品に求めているわけです。アルピナはそういう人のために、クルマを作っているのです。数ではなく満足なのです」

シュスター氏の言葉の意味を確かめるような光景は、エンジン工房だけでなく、インテリア、エクステリア、車両のアッセンブル、最終チェック、あるいは開発中のエンジンが回るテストベンチといったすべてのフロアで見ることができた。アルピナは間違いなく100%、人の手でクルマを作っている。

「先ほど料理の話をしました。心を打つ料理というのは、特別なものでなくてはなりませんが、逸脱した個性が露呈してしまっては台無しです。とても絶妙なセンスで完成されなくてはならないのです。

アルピナにおいて、そのさじ加減を決定するメジャーは、他でもないボーヘン・ジーペン本人なんです。彼は今でもプロトタイプが完成すると、彼の息子とともにそのクルマに乗り、テストドライブを行います。そして彼の言葉は、まるで本人がクルマと同化して部品のひとつになってしまったかのような表現で発せられるんです。

“今の動きはこういうことだよ。もっとこういう風になるといいね。ここは素晴らしく仕上がったね”

分かりますか。アルピナはボーヘン・ジーペンの感覚、生き様そのものなんです。ですからそれを、世界中の最大公約数に解釈し直して分かってもらおうという必要はないんです。それよりも、このようなプロセスを経ることで、クルマの性格はどんどんピュアなものとして澄んできます。それがアルピナというクルマなんです」

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実際アルピナに乗ると、なにひとつ尖った感触がないのに、得も言われぬ興奮に満ちているクルマだという感激に包まれる。十分にパワフルなエンジンは、けれども決して神経を逆なでするような表情を見せない。シートに身体が吸い付けられるようなコーナリングフォースを実現するサスペンションは、けれども決して乗員を激しく揺すぶったりしない。上質な革の香りと透き通ったエンジンサウンドに包まれながら、ひたすら感激だけを味わいながら道程を進めることに酔っている自分の姿を見つけることができるのだ。エンジニアリング的に言うならば、すべてがまったく機械として追求すべき正しい方法で、しかもすべてを紙一重の抑制の範囲の中に留めた仕業。とんでもなく次元の高い技術力と、信じられないほど理性的な思想が両立していなければ、こういうクルマ作りは不可能だと言い切れる。

「アルピナは、何かほかのものと比べて良い悪いを語るべきクルマではありません。もちろんそれは、BMWよりもいいものだ、という感覚でもないのです。ただひたすらに、誰にも似ていない違うものを作っていきたいと考えているわけです。

我々の言う“エレガンス”という言葉の意味は、大きな屋敷に住んでいて、あり余るほどのお金があってということを指すのではないということを是非知っておいてください。エレガンスは物質的なものではなく、個々の心の中に宿る感覚だと思うのです。ですから、人生に夢があって、そこへ邁進しようという気持ちに溢れている人は、とてもエレガンスな人なのです。そういう気持ちを表現する手段として、素晴らしいドライビングを楽しみたいという思いがあるのなら、アルピナはすぐ隣りにいるといってもいいほど身近に感じられるはずです。アルピナに宿る魂は、そのような人生を送る人にこそ愛おしく感じられるものに違いない。そう思うんですよ」

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上出優之利 写真個展「クルマの達人」、トークショー

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上出さんの写真展で開催されたトークショー、大盛況でした。キヤノンギャラリー銀座へひとときに50人以上が詰めかけたと言えば、ギャラリーを訪ねたことがある人なら分かると思います。すし詰め寸前の立ちっぱなしの1時間20分。お越しの皆さま、たいへんお疲れ様でした。上出さんの人徳、さすがですね。素晴らしいです。

上出さんが雑誌連載「クルマの達人」のために撮影した作品を紹介する写真展ではありますが、わたしもマイクを持って皆さんの前に立つことになりました。上出さんと共に展示された写真を順に巡り、わたしは写真で表現されたそれぞれの「クルマの達人」にまつわる仕事や個性が垣間見えるエピソードを話させていただきました。

記録に、と思い、それぞれの写真の前で上出さんとわたしが話す様子の動画を撮りました。その中から、お一人の動画を紹介します。このブログには動画を直接貼り付けることができないので、貼り付けた先のリンクを載せておきます。ぜひ、ご覧ください。

【トークショーの一場面】

ときに「クルマの達人」、振り返ればカーセンサー、カーセンサーEDGE誌での連載期間が26年目に入っています。そもそも「クルマの達人」という連載タイトルは、それ以前にCarEx誌で連載をしていた“新日本達人紀行”用に書いた数年分の原稿をまとめて出版したいという話をいただいた時に、その書籍用に考えた標題です。「クルマの達人」という看板は1997年に書籍のタイトルとして世に出ましたが、クルマにまつわる何かに心注いで働く人の考えや生き様に焦点を当てて紹介するというコンセプトは、もう30年を超えて継続をさせていただいているということになります。

そのような時間の中で、パワフルで魅力的な才人の生み出す企画に採りあげていただけたことに、とても感謝しております。


【上出優之利 写真個展「クルマの達人」】
東京・銀座での開催は26日(土)までです。ぜひ、お運びください。

キヤノンギャラリー銀座
入場は無料ですが、休館日があるので以下のウェブサイトで詳細をご確認の上、お出かけください。

【キヤノン公式ホームページ 上出優之利写真展「クルマの達人」】




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